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若い者との共同作業で己の老いを察する [日記、雑感]

 この記事は先週末21日から22日にかけて書き始めたものに補記した。文字だけで全てを伝えるのは難儀だと今更ながら思うが,まとまった量のテキストを一気に書き上げるのもなかなかエネルギーを要するものであり,その辺の馬力も低下傾向かと自分の衰えを感じ始めてもいる次第。 

 当然の話だが人間段々歳をとっていくもんだ。
同年代の知人達との日頃の雑談中,段々持病のことだとか年金のことが話題に上がることが増えてきた。俺はもう,そういう年齢に達しつつあると言うわけだな。

 今週末は疲れが取れず,身体のあちこちが筋肉痛を起こしてガチガチに硬い。三日経ってもこんな塩梅であるところに俺は確実に自分の馬力の衰えを実感するわけだがこれは19日木曜日の作業のせいだ。
 その日俺は元の職場の若い衆と二人で某リゾート施設に食器洗浄機の修理に入った。2タンクのコンベアー洗浄機で,作業内容は洗浄ポンプの交換で、その重量は30kgは有に超えるだろうというデカブツだ。夕食と朝食の会場であるホールのバックヤードにその食器洗浄機はあり、約500人分の食器を洗う。繁忙期での故障であり、色々な意味で切羽詰まっている。

 ポンプはインテークの鋳物製タンクと吐出側の同じく鋳物製のヘッダーとの3つがボルトで連結されており、合計すると間違いなく60kgを超えるのでとても一人の腕力では脱着などできず、2名作業となった。

 俺の現場ではないので作業中の状況を画像として記録しておく事を今回はしていない。文字だけで詳細を伝えるだけの文才が俺にはないので、実作業のディティールは今回詳述する事はできない。

 結論から言うとこの作業は不調に終わった。若い衆と俺は近日中に修理未完部分の手直しに近々再訪問する事になる。作業時間は実に7時間半に及び,これは事前の作業工程予測が大幅に狂ったことを表している。実際,撤収時刻が午後9時半となり現場の方には大変ご迷惑をかけてしまった。
 事前に予測されていた問題点がそのまま露呈し、作業の長時間化に至ってしまったわけだが列記すると以下のような事になる。
(1)コンベアータイプの食器洗浄機は設置計画時に整備性が決まる。壁沿いに設置する場合は必ず背面に300mm以上のバックスペースを空けないと下部の配管やポンプを弄る時に地獄を見る。
 機種にもよるがほぼ全てのコンベアータイプはポンプ周りを整備する時には正面と背面からの二名作業で行う事を想定している。300mmというのは人の身体の厚みの大体の寸法だ。身体を横にして洗浄機の背面に入り込めるスペースがないと全ての作業は正面から行わなくてはならず、場合によっては手も足も出ない。駆動系の減速機やチェーンも奥まったところに組み付けられている場合がある。
 アンダーカウンタータイプならいざ知らず,コンベアータイプともなれば本体重量は300kgを軽く超え、配管接続を全て切り離して本体をずらすことには全く現実味はない設置計画なり機種選定がその後の整備性を決定づけることになる。どう置いても良い、後はサービスマンが何とかしてくれるだろうとは考えて頂きたくない。

(2)蒸気や排水の鉄管配管,ユニオン接続の分解は潔く諦めて壊せ。
 金属管の配管接続に使われるユニオンという継ぎ手があり、下の画像のような形状をしている。
KIT1_069.jpg

 今回作業のケースでいうと,ポンプ周辺の配管接続には呼び径40Aのユニオンが多数使用されていた。組みつけの際には450mmくらいのパイプレンチが必要なごつい継ぎ手だ。
 既にご存知の諸兄は多数おられると思うが,鉄の最も錆びやすい温度帯は60℃近辺であり,食器洗浄機の洗浄タンク排水温度はこれと見事に一致する。しかも洗浄タンクからのオーバーブローには塩分なども含まれているので10年かそこら稼働した個体だと鉄管排水の接続部に使われているユニオンはガチガチに錆ついており,焼こうが叩こうがおよそ人力で分解できるような代物ではなくなっているのだ。
 だから作業内容の中に排水配管(鉄管)の分解が含まれていて事前に作業費の積算を行う時にはそのユニオンを分解して再利用しようなどとは考えるべきでない。潔くグラインダーでぶった切り,新たな継ぎ手を使って組み直すと考えておいた方が無難だ。まるまる一日を費やして一箇所の配管接続を分解するだけの余裕が与えられている現場はまずないし,継ぎ手一個分の仕入れ価格と引き換えに時間を消費して筋肉痛に悩まされるのは現実的でない。
 俺は過去に於いてこの件で随分痛い目に遭ったのでそれを一種,教訓としてその場に臨むことにしている。元の職場の若い衆に事前に忠告してはおいたが現実に自分が痛い目に遭わないと他人のいうことを真剣に聞く気にはなれないもののようだ。これが二度目だが元の職場の若い衆は焦ったり凹んだりしながら現在,学習中である。若い衆よ,大人の言うことは聞いとくもんだぞ。

(3)ポンプをはずす時間と組み付ける時間はイコールではなく、多くは後者に物凄く時間がかかる。
全てのコンベアータイプ洗浄機がそうだとは言わないが,俺の経験上では国内メーカーの製造する食器洗浄機は10年かそこら稼働しているとほぼ間違いなくタンクやフレームが歪んでいる。
 だから一旦,ポンプを取り外してから新しいポンプを取付けようとすると大概ボルト穴が合わず、作業は大いに難航する。四苦八苦した挙げ句にどうにかこうにか取付けても,そもそも歪んだ面に無理矢理組み込んだものなので合わせ面から水漏れが遭ったりして再度やり直しの憂き目に遭うのは珍しくない。
 そもそも日本の厨房機材のメーカーなどというのはその大半が板金屋を出発点としている。輸入機械を一台買い込んで分解し,それをお手本にして自分たちが見よう見まねで作った箱に寄せ集めのパーツを組み込んでいるに過ぎない。本来的に機械メーカーではないのである。
 コンベアーを搬送させればそこで応力が発生するし,タンクには100ℓ以上のお湯が入っているのだから運転中にはタンク一個あたり100kgの重力が働いている。それらを受け止める筐体という発想に基づいて製品開発を行っている国内メーカーは俺の知る限り殆どなく,唯一の例外はIHIだが既に事業は譲渡済みである。

 顛末としてはどうにかこうにか,もたつく作業に従業員達の顰蹙を買いながら区切りは付けたものの食器洗浄機は動かすことが出来た。
 先にも書いたが所要時間は7時間半で、最近では珍しいロングマッチとなった。某うどんのチェーン店での茹で釜の整備以来ではないだろうか。
 未熟ながらも体力はある若い衆との共同作業だったので長いこと気を張り続けてはいたが,これが自分一人での修理作業だったら果たして7時間半もの長時間にわたって作業を続けていられたかどうかについては余り自信がない。何だかんだ理由を作って使用者を言いくるめ,作業は中断して後日完了予定,というふうに協議をまとめることも場合によっては出来なくもない。そういう話術も年の功のなせる技だが技術屋の端くれとしては奥の手であって,若い衆に置いてけぼりを食わないよう老骨に鞭打って頑張れるだけ頑張るのが正道だろう。

 それなりの経験年数を積み上げて場数を踏んだ上で感じることだが,厨房機器メーカーのサービスマンの一般的な傾向として,それなりの経験則を身体で憶えてはいても基礎的な物理現象については知識のない者が多い。また,機器の内部については経験則に根差した程度の知識はあっても周辺環境との適合性に関する知識のない者が多い。
 上から目線で偉そうなことを書いてはいるが,実のところこの俺もあんちゃんの頃はそういう程度の修理屋でしかなかった。それで随分時間を浪費し,使用者の顰蹙を買い,散々赤っ恥をかいた。若い衆と共同で作業をしているとその危なっかしさや心許なさが目につくが自分の若い頃の姿とダブるところは大いにある。それを言い換えると若い衆の未熟さが目につく程度に俺は於いた。体力は落ち,その代わりにある種の知恵は幾つか身に付いた。歳をとるというのはそういうことなのだろう。全てを兼ね備えた存在であったことは自分の人生に於いてはなかったことになる。
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くるみ

一時期(中途半端な年齢?)には、体が動かない、すぐ疲れる等を年齢のせいにするのが嫌でした。今は 自分の年齢的ハンディを認めると逆に仕事がしやすくなりました。甘えや手抜きやサボりではないのだと(^^ゞ。勉強も若い頃は避けていて したいと思った頃には頭が固くなり…うまく行きませんねf(^^;。
by くるみ (2015-02-27 01:16) 

HarryTuttle

くるみ様,いつもコメントありがとうございます。
 出典は忘れましたが物の本によると,人間幾つになっても30代の身体能力があると思いがちなものなのだそうです。
 本日,私の生息地は大雪で朝から人力除雪に追われ,音を上げています。一昔前だったら午前中一杯くらいはノンストップでせっせと勤しんでいたはずなのですが今はそうなりません。
 馬力の衰えは精神にも影響を与えるもののようで,途中でイヤになるのが以前よりも早まりました。
by HarryTuttle (2015-02-27 10:19) 

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