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厨房はクリーンルームではない [お仕事上のぼやき]

 俺はこれ迄このブログで何度か,過度な衛生管理の厳格化など大して意味がないと述べてきた。以前の記事でも書いたが機械の修理なんていうのは大なり小なり汚れるものであって半導体製造やバイオ関係の施設ならまだしもなんでたかだか厨房くらいでこんなに服装のことでガタガタとこうるさいことを抜かすのかといい加減頭に来る。 確かに俺の日頃の服装は大して清潔感のあるものではないが,それにしてもオイルのシミだのズボンの折り目だのと行ったこと迄グダグダ抜かすようなバカのところに呼ばれたら問答無用でクリーニング代の請求をさせてもらおうかと真剣に考えている。

 大体,人の服装のことにはいちいちイチャモンをつけるくせに自分らはどんなご立派な衛生管理をしているというのか。

 以下の画像はある病院の食器消毒保管庫の修理の際に撮影したものだ。
作業内容は庫内循環用のブロワーモーターの軸受け交換である。軸受けのベアリングのグリスが切れて回転時に摩擦音が発生し、相当うるさい。
 一般に,どの製造元もブロワーモーターのベアリングという補修パーツは持たない。こういう場面でのメーカーの所見と対応はモーター不良により交換であり,補修パーツとしてもブロワーモーターは大体5万から7万円くらいの値段がつく。ということは食器消毒保管庫の運転時にブロワーモーターからの異常音が発生して厨房屋を修理に呼べば大体6万5千円から9万弱くらいの請求が来ることになる。

 しかしだ,食器消毒保管庫を製造している厨房機材メーカーのうち,自前でモーターの製作迄している会社など一つもない。一つの例外もなくどこかの電機メーカーの出来合いのファンモーターを買って来て内製した箱に組み込んでいるだけであって、そのモーターに組み込まれているベアリングというのはこれ迄俺が見てきた限り一つの例外もなくJIS規格のごく標準的なものであり、その値段は高くて千円程度,モーター一台分で二個なのでモーターコイルやステーターに損傷がなければパーツ代など高くて三千円程度に過ぎない。
 モーターベアリングの交換など専門業者でなくとも例えば自動車の整備工などはごく当たり前に行う作業だが何故か厨房屋は会社ぐるみでこれをしない。もしかしたら出来ないと言う方が正しいのかもしれない。

 話の流れは冒頭書いていたことから少し逸れて枝道に入る。というか本当に見て頂きたいのはここからだ。
修理個体は北沢産業製の食器消毒保管庫で,損傷したブロワーモーターは昭和電機というメーカーのものだ。
IMGP0154.jpg

 モーターケースのケツ(下品で恐縮だが日頃俺は何となくそう呼んでいる)をはずしたところだ。少し距離を置いても埃だらけであることが明らかだ。
IMGP0155.jpg

 軸受け部分のアップ。そもそも軸受損傷の直接的な原因はグリス切れによる回転時の潤滑性の低下なわけだが更にその原因を掘り下げていくとベアリング内に埃が混入するためだ。何故なら給食設備がウェットフロアーであるのが一般的だった頃にはこの手の障害の発生は今よりもずっと少なかったからだ。
 どうもドライキッチンというのは誤解されているのではないだろうか。ドライだから床を水まき清掃しなくて良いなどということはないのであって,調理業務を行っている間はドライであるというに過ぎないものを拡大解釈しているバカな栄養士は大変多い。
 何も今更、ウェットフロアーが良いなどと時代遅れな主張をするつもりは全くないが,ドライであるということは室内の埃の浮遊が活発になりがちだという程度のことくらいは頭に入れておいてもらいたいもんだ。厨房はクリーンルームではない。
IMGP0157.jpg

 ステーターを抜き出したところ。モーターの状況を追記すると,固定ヨークやコイルに迄綿埃がびっしりと絡み付いており、ステーターを抜き出してベアリングを交換すると同時に内部は清掃しておかなければならない状態にあるのはドライキッチンである設備の全てについて言えることで,俺の経験としてはこれ迄一つの例外もない。
IMGP0156.jpg

 ステーター先端に取付けられているファンホイールのアップだ。清掃前であり,綿埃がびっしりとまとわりついている。衛生上問題なのは勿論であり,この状態もドライキッチンである施設ではこれ迄例外なく経時的に起こっている。
 勿論、モーターがこうして埃だらけになるということは、保管庫内で熱風消毒されている食器にも埃は付着しているのは当然で、その食器は次の配食事には保管庫から取り出されて食品が盛りつけられ、喫食者はそれを直接手に取って飯を食うのだが、いいのかよ、それで。
 ファンホイールへの埃の付着量が更に増えていくと風量が低下し,発熱体の周辺空気との熱交換が進まないので庫内温度のばらつきが大きくなる。副次的な障害である。

 繰り返し書いておきたいが,これは食器消毒保管庫の修理である。集団給食の現場であればどこにでもある機材だ。
 そして栄養士連中は喫食者には埃まみれの食器で飯を食わせて平気でいるくせに俺のような修理屋の服装については白衣を着ないのがけしからんだとか作業着に油のシミが付いてるのが不潔だなどと好き勝手なことを抜かすのである。ブーメランとはまさにこのことであって,今回はたまたま食器消毒保管庫のことを書いたがこの手の事例などバーゲンセールをやってもいいくらい沢山ある。
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くるみ

ウェット、ドライ共に一長一短があると認識しています。どちらも短所をカバーする作業が必要ですよね!? 長所ばかりに甘えた結果のように思います(^^;。それにしても 凄い埃ですね!!(笑)。

by くるみ (2015-02-20 02:21) 

HarryTuttle

くるみ様、いつもコメント有り難うございます。
 モーターの状態としてはひどいものですが、修理屋的立場としては珍しくはありません。異常音を発生するブロワーモーターは大体こういう状態になっています。
 但し、多くの厨房メーカーのサービスマンはモーターを分解せずにそっくり交換するのが一般的な習慣なので修理業者も使用者もこの状態を目の当たりにする事はありません。
by HarryTuttle (2015-02-23 03:02) 

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