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ラチェットめがねレンチの遍歴を簡単に振り返ってみる [含蓄まがいの無用な知識]

 これ迄あれこれ使い続けたハンドツールのうち,作業の質を最も大きく変えたものは何だったかと考えた時,それは恐らくラチェットめがねレンチだったのではないかと思っている。
 何といっても,ソケットレンチの出番が激減したことの効果が大きい。常用するツールバッグの他にわざわざソケットレンチ一式のケースを持ち歩かなくて済むようになって移動は楽になった。
 その一方でコンビネーションレンチとして見た場合,ラチェット側はオープンエンド側を使用する程にはナットを傷めず,更にオープンエンドレンチよりも早回しの性能は高いので,オープンエンド側の使用頻度が下がり長持ちするようになった。通常のコンビネーションレンチで言えばめがねとオープンエンドの使用比率は感覚的に3:7くらいだったと思うがラチェットメガネレンチに変えてからは早回しのときでもめがね部分を使用することになるためこの比率がほぼ逆転し、作業時間は大いに短縮された。

 昨日日曜日の昼,しばらくぶりに商売道具の手入れでもしてみようかと道具を引っ張り出してみると今に至る迄に結構あれこれ試し買いのようなことを繰り返していたことに気づき、せっかく買い込んだ商売道具のことを顧みてみたくなった。

 下の画像は俺がこれ迄買い込んだラチェットめがねレンチで,現在手元に残っているものだ。スパナやレンチ類でミリサイズの場合俺の常用する範囲は7mmから19mmで,最も頻繁に使用するサイズは8mmと10mm、ねじの径で言えばM5,M6となる。ここでは対辺8mmについて購入した純に並べてみた。
IMGP0218 のコピー.JPG

 左から右に向かって1,2,3と仮に番号を振ってみてちょっとしたコメントを垂れ流してみるか。

1:メーカー不明
購入したのはまだ勤め人だった頃で,設備資材の問屋のフロントに置いてあったものだ。今から13,4年前だったと思う。この手の工具としてはかなり初期のもので,並べたうちでは最もヘッドが大きいので狭い場所は苦手だ。ここで並べたうちでは唯一,ギヤレスのラチェットであるところが最大の特徴で振り角の狭さでは他の追随を許さない。但し強度的には今一で仮締めと早回し限定と見るべきだろう。俺はこの時同時に買い込んだ13mmで錆びかかったボルトを緩めようとしてものの見事にぶっ壊した。

2:スエカゲツール
 自分で使用するためではなく,当時の勤務先で俺の部下として働いていたあんちゃんの常用ツールとして俺が買い与えたものだ。あんちゃんは幾らも持たずに会社を辞め,ツルピカの工具が残った。12年くらい前のことだ。俺が10年前に開業するために退社したとき,余り物の工具を貰い受けた中に入っていた。ボディというかハンドル部分は流線型状の断面で細く,力を入れて握ると手に食い込んで痛いので幾らも使っていない。
よくギヤレンチという呼び方をされるこの道具だが,このレンチにはボディにその打刻があり,商標登録されていることが示されている。だからそれはスエカゲツールの製品にだけ許された呼称だということになる。

3:KTC
 8年位前だったと思うが機械材料の問屋の展示会でKTCの営業に奨められ、一発で気に入って買い込んだものだ。ラチェットめがね部分がフレックスヘッドになったものを手にしたのはこれが初めてで,俺の作業はこの道具によって革新され、ここからソケットレンチの出番が激減していく。なんと言っても本締めOKというところが頼もしい上に,72ギヤの精密管は当時俺を驚かせた。今になってみるとギヤの感触が少々堅めで,後述する他社製に比べると早回しの時に共回りが起こりやすい。
 ハンドル形状はI型の断面で大変握りやすいがミラー仕上げなので手が油でベトベトになると滑りやすい。力をかけた時の剛性感はここで挙げた中では最高点。

4:トップ工業
 ここ3年くらいの間に使い始めたメーカーで、仕入れ先は設備資材の問屋からだ。こちらは仕上げが梨地であり、先に挙げたKTCよりは滑りにくいがボディ断面は楕円状で力は相対的に入りにくい。ラチェットの片側のリングは黄色にカラーリングされており、回す方向が一目で識別できるところは親切。ここで取り上げた中では全長は一番長いが、これは別にショートタイプのラチェットめがねレンチがラインナップされているからだ。正転時、空転時、ともにKTCに比べてタッチは軽いが反面力を思い切りかけた時の安心感はやや心もとない。但し、製造元では本締めOKをアナウンスしており、目下のところ山飛びの破損例はまだない。トップ工業のレンチ類の常として,少々野暮ったく重いが剛性はあって値段が安いところは貧乏自営業としては助かる。

5:TONE
 今年の夏頃から、日頃の携行用の腰道具のツールポーチに入れておくようになった。機械材料の問屋から購入。ギヤのタッチ、ボディの仕上げや形状、オープンエンド側のコンパクトさ、などなかなか完成度は高い。ボディ両端は絞り込まれてくびれており、狭い場所での回転角を稼げるので有利である。全長はトップ工業のものよりもやや短いのでポーチに入れても飛び出さず、収納性は良い。ここで取り上げた中では最も使用頻度の高いレンチだ。

6:FACOM
 ネット通販で昨年購入したものだ。ラチェットは固定で15度のオフセット角を設けてあり、回転方向の切り替えはヘッド近くのレバーで行う。KTCとほぼ同寸のショートサイズだが狭く、入り組んだ場所での使用では固定ヘッドの方がふらつきがなく安定するようだ。
 ボディの形状や使用時のタッチなど、先に挙げたTONEの製品と大変酷似している。出元は同じではないかと思われるがリリース時期から言ってFACOMのほうがこのデザインの先駆であり、TONEにむけてOEM供給しているのではないかと俺は見ている。それまで72山のラチェット機構に手をつけずにいたTONEがここ一年くらいの間に急に多くの製品をリリースし始めた背景にはFACOMとの提携が関係していたのではないだろうか。
 ちなみにアメリカのMac ToolsにもFACOM と殆ど同じ造りのラチェットめがねレンチのラインアップがあり、こちらはセット品のレンチホルダーまで同じ形をしている。

7:TONE
 最近、カタログに記載されるようになったが元々は創立75周年限定のセットのうちの一本で、先に取り上げた5との違いはオープンエンドレンチにラチェット機構が組み込まれている事だ。普段はセットのケースに収まっており,出番はあまり多くない。
 FACOMとTONEの関係について憶測のような事を前段で少し書いたが、数年前にFACOMが提唱して製品化されていたファーストアクションレンチに似た形状のオープンエンド側は何かしらの影響を感じさせる。オープンエンド側のラチェット可動部分は樹脂製で華奢な印象だ。油の耐性が未知数で交換可能な造りに見えないので使用は何となく遠慮がちで,目下のところケースに収まったところをたまに眺めて悦に入るだけのしょうもない買い物の産物だ。

 とまあ書き並べてみたが,世の中に出回る全ての製品を買い込んで試すことが出来るわけでもなく,自己満足みたいな記事だ。同業者と顔を合わせた時に勧めてはみるが反応はあまり良くない。
 推測できる理由の一つはラチェットめがねレンチがあるから従来からあるようなコンビネーションレンチやソケットレンチが無用になるかと言えばそうではないこだ。ラチェット機構を組み込む関係上,どうしてもメガネレンチに比べるとヘッド部分は厚みが増して大きくなるのでメガネでないと入らない部分はあるし,凹んだところについているボルトやナットはソケットでないと入らないのでラチェットめがねは必ずしも万能ではない。

 万能ではないことがわかっていながら新しい製品を見かけるとついつい(一丁,試してみるか)と財布の紐が緩むのは俺がこの先も貧乏自営業者から脱することが出来ない未来を表している。
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くるみ

素人目には似たように見えるお道具にも、それぞれの適材適所があるんですね。包丁より細かい気がします。それぞれに思い入れもありそうですね(^o^ゞ。
by くるみ (2014-12-16 23:31) 

HarryTuttle

くるみ様,コメントありがとうございます。
 日常手にすることが多い道具だけに,使い勝手はいつも気にしており、知らない製品を見るとつい手に取ったりもします。
 サイズを揃えるとバカにならない金額になりますが,材質と工作精度が生命線だけに掘り出し物というのはなかなか見つかりません。
by HarryTuttle (2014-12-17 11:38) 

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