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日曜日午前4時30分に終了 [お仕事上のぼやき]

 前回記事の続きであり,この記事は本日月曜日の午後6時頃に書き始めている。今迄何度か取り上げたことをここでもまた問題提起したい気持ちがあるが,特定の企業に対する非難と受け止められるのは心外なので,固有名詞や現場の画像を挙げることはしない。よってわかりにくいところはあると思うが御勘弁願いたい。

 土曜日午後10時からの作業現場は某うどんのチェーン店である。途中休憩を挿んで深夜,6時間半にわたる労務でさすがに翌日,日曜日の俺はグダグダな状態で終日を過ごした。さすがにもう若くはない。

 修理したのはこのチェーン店向けに特注仕様で製作されたうどんのゆで釜だ。熱源はガスで燃料はLPG,燃焼方式は自然燃焼で,点火方式はイグニッションによるパイロットバーナー着火,点火保持はフレームセンサーによって行われる。燃焼器具ではあるが上記の仕様により100V電源を必要とする。
 点火系統に障害が出た場合の回避措置としてこのゆで釜にはガス管のバイパスが設けられており,圧電着火とサーモカップルによる立ち消え防止機能を持つ別のパイロットバーナーに至る。メインバーナに至るガス管が2系統あって、通常使用時と電気系に異常があった場合の仮運転とを3ポートバルブによって切り替える構成になっている。
 湯槽の形状は平底であるが、熱効率を上げるために底面の裏側には銅製のフィンが一面にスポット溶接されている。吸熱面積を上げることで熱効率は上がる反面,形状が複雑化することで流体抵抗は上がって燃焼排気の流速が落ちるので煤の堆積による不完全燃焼は発生しやすい。あるメリットが別のリスクを生む例は枚挙に暇がないがこういう設計思想もその一つだ。
 従来,平底の吸熱面を持つ燃焼器具は熱効率が低く、裸火に等しい。その数値は約35%だが,上に書いたような加工を施すことでこれを約20〜25%程度向上できるとされている。吸熱フィンを銅製とすることで点火後の立ち上がり特性は更に改善されるのだが、ステンレスと銅との溶接は厨房機材のメーカーにとっては長く難題である加工法だった。
 試作段階をクリアして製品化されるようになったのは3,4年前ではなかったかと思う。涼廚(すずちゅう)という何とも脱力しそうなネーミングで大阪ガスの提唱する厨房機材の認証制度を取得するために燃焼器具メーカーは各社色々、開発を進めたわけで,件のゆで釜もそのうちの一つであり,製造元は俺の元の勤務先だ。
 涼厨(すずちゅう)http://ene.osakagas.co.jp/product/kitchen/cool_kitchen/

 土曜日閉店後の整備作業に先行してこのゆで麺器の修理には俺の元の勤務先の後輩が入っている。五日金曜日,何と彼は8時間にもわたってこのゆで釜の修理で格闘し続け,疲労困憊の体で翌日の応援を俺に依頼してきたのだった。

 不具合の状態はパイロットバーナーの失火警報によるガスの遮断で,ゆで釜に火がつかないのであれば店舗としては商売あがったりだろう。緊急回避用として先に書いたバイパス配管に切り替えての運転を試みたところ、パイロットバーナーの銅管にクラックが出ており,彼はこの補修に手を取られて何とか回避措置に迄はこぎ着けた。
 しかし回避措置後の試運転を行ったところ不完全燃焼が起きており,お湯の昇温が遅くうどんを茹でる工程がオーダーに追いつかない。店舗はやむなく機器の不具合によりオーダーに対して遅れが発生する旨の告知を入り口に貼り出す事態にまで至った。何といってもゆで釜の排気筒から煤が飛散するのでオープンキッチンの店舗としてはパニックみたいな状態を露呈しており,俺などからすればそら見たことか言いたくなる。

 パイロットバーナーの失火警報の原因は煤の発生によるものであり,フレームロッドと本体シャーシの間に落下した煤がブリッジ状となることで疑似火炎判断されて遮断弁(電磁弁)が閉じたことになる。
 要するに大元の原因は不完全燃焼であり,既にバーナーの収まった燃焼ボックスや煙道(排気筒)は煤だらけなので一度筐体を分解して湯槽を取り外し,堆積した煤を清掃しなければならない。しかし分解するためには接続された配管を切り離して茹で釜自体を手前に引きずり出さなければならず,その重量は有に200kgを超えるので人手が欲しい。加えて製造元の工場ではこれ迄の納入例で見る限り筐体を分解して湯槽を取り外す修理の事例がまだないとのことで,色々な意味で一人でけりをつけるには少々心許ない。俺に声がかかったのはそういう経緯でのことだった。

 重量物である湯で釜を移動させるために,後輩はハンドリフトを借り出してきたが,茹で釜の底面は強度がなく,使用できないことがとっかかりの段階で判明し、ごり押し気味に人力で引きずり出すことになった。作業開始は閉店後の清掃業務が終わってからで午後11時近く。前例がないので先の見えない手探り作業であり,
ああでもないこうでもないと二人であちこちいじくり回しながらようやく湯槽を取り外せたのが既に日付が変わってからのこと。

 湯槽の底面に溶接された銅製のフィンはびっしりと煤で埋まっており,これではお湯の沸くのが遅いのは歴然だ。それどころかこんな状態で無理矢理稼働し続けていれば高性能な一酸化炭素発生装置であり,ホールと一繋がりのオープンキッチンとは言え直近で働く従業員が中毒になる可能性だってなくはないのだ。
 堆積した煤は洗い流すしかないのだが,時期が夏場ならいざ知らず今は12月で,おまけに俺の生息地は深夜ともなると氷点下10℃以下となるので煤を洗い流すための水が氷結してしまい,屋外には持ち出すわけに行かない。
 店舗内で煤を荒い落とすための洗浄作業を余儀なくされるわけだが,そうなると飛散が問題になるので店舗内はかなりの広範囲にわたって養生する必要に迫られた。
 他にも色々,作業上の問題は多く,作業は難航してようやく撤収できたのがタイトルに記した時刻だったわけだ。

 不完全燃焼が発生した原因については比較的容易に見当がついた。
これ迄何度過去のブログで例を挙げたようにここでもまた空調の問題だ。天井から伸びている何本かのスポットエアコンのノズルのうち一本が問題のゆで釜の方を向いている。
koshigayataikan.jpg

画像は本文とは関係ありません

 釜の前に立つ従業員の作業環境を配慮してそういう設計としたのだろうが,冒頭書いたように茹で釜のバーナーは自然給気だ。バーナーのノズルから出る燃料(LPG)が生み出す負圧とは比較にならない程の気流が発生しているのは明白で,一次空気の取り込み量が不足しているのは歴然だ。
 後輩はそこ迄の洞察が働いてはいないようで,この周辺環境が変わらない限りゆで釜の不完全燃焼は何度でも再発する可能性があることを指摘すると後輩は露骨に凹んだ。

 そんなこんなで撤収が終わり,煤まみれのオヤジ二名は腹が減ったので帰り際に吉野家で夜食とも朝食とも言えそうな飯を食った。後輩はおろしてまだ二日目の作業着が煤まみれになってしまったことにまた凹む。煤けた顔がなお一層暗くなった。きっと俺も同じだろう。

 どうも燃焼器具は全般に,時代の趨勢とそぐわないものになって今っているのではないかと今回俺はあらためて思う。近いうちに俺は所見をまとめて一つ記事を書こうと思う。
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