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オープンキッチンと燃焼器具の相性について(3) [困った業者]

 異臭(ガス臭い)はガスフライヤーのパイロットバーナーが立ち消えすることによるものであり、立ち消えは建築構造や空調設備の問題に原因がある,というのがその日割り出した俺の所見であり,俺はここで一区切りついたものだと線を引いた。
 フライヤーそのものに不具合が認められないとなるとギャラはたいした額にはならないが、文字にして書き起こせばこういうボリュームではあっても現実の時間経過としてはせいぜい40分程度の滞在時間でしかない。加えておれとホシザキのサービスチーフ殿はそれぞれの仕事に於いてお互い少々補完関係があり,あまり杓子定規に経費請求する気にもなれないので俺の方からはいずれどこか収益の良さそうな現場で足代と駐車場代くらいが出ればいいよ,と伝えておいた。

 商売としてはこんな事ではいけないのだろうが,あの,何でも社内で処理できてしまうホシザキのサービスからの依頼を受け,貸しを作る構図に俺はいい気になっていたわけでビジネスとしては何とも甘いが、まあいいだろう。

 それから数日経ってのこと,ホシザキのサービスチーフ殿から俺の携帯宛に連絡が入った。
現状のガスフライヤーについて改善しておくべき点を全て処置してほしいとのことで、俺はその意図がすぐには理解できず,その真意を問いただした。
 ガスフライヤーの燃焼状態それ自体にある問題点を強いて挙げれば2槽のうちの片側のサーモカップルの出力が高すぎるて寿命に懸念があるので少し押さえ気味にしておくくらいで,これとて立ち消えの問題と直接関係があるわけではない。
 解決すべき問題は建築構造なり空調設備にあるのであって、周辺環境が満足されていればガスフライヤー自体は正常に燃焼するのだから機材の修繕としてすべきことはないと俺は説明するがサービスチーフ殿はそこを何とかと食い下がる時間がしばらく続く。

 そもそも,パイロットバーナーなどという微弱な燃焼を持つ機材を風が吹き込んでくるような場所に設置することに問題がある。もっと拡大していえば現在出回っている燃焼器具はかなりの割合で周辺に風が起きているような設置状況を想定していない時代の産物だ。
 乱暴な解決策であり,現実味は全くないが,周辺で風が起きる状況を無視して安定稼働できる条件を責任区分の範囲内で立案するならば,どうせ減価償却が済んでいる個体なのだからいっそ内線工事でも行って電気フライヤーに取り替えてはどうか。

 物事の構図は彼と話を続けるうちに段々読めてきた。
これは俺自身,今迄色々な現場で経験済みだが厨房屋の立場は大変弱い。建築工事,設備工事,厨房屋というヒエラルキーは大変強固なものであり,俺達のような業者が設備屋や建築屋の施工上の問題点を指摘して言い分を通すのは非常に困難な現実がある。
 ほぼ全ての場合に於いて,「問題が起きているのは燃焼器具なんだから器具の納入業者が解決しろよ!」と一喝されて押し切られる。何とも粗雑な切り分け方だとしばしば頭に来るが,建築屋や設備屋はしばしば厨房屋に対する発注者であり,逆の流れはないので厨房屋の立場が弱い。厨房屋の窓口が営業職だと尚更で、ホシザキのように営業職とサービスが完全な分業制だと全てのしわ寄せがプランニングや施工を担当したわけでもないサービスマンに押し付けられる。恐らくこのケースに於いてもそうだろう。俺はサービスチーフ殿に同情した。恐らく彼は色々と板挟みになって悩んでいるのだろう。

 これは俺一人の想像でしかないが,今回のケースでは空調設備業者に何かしらの負い目があり,それが表面化することを懸念するせいで厨房屋に責任が押し付けられてホシザキが割りを食ってるのではないのか。
 店内の負圧の度合いを低減させるのであれば,その試験は簡単で排気ダクトの終端の,例えば半分くらいを何かで塞いでみれば効果なり変化は確認可能だ。恐らくそれはよい方向、ということはOAの店内へ吹き込んでくる度合いが弱まる方向に作用するのではないかと俺は頭の中でシミュレートしている。
 しかし,それで効果が上がったのだとすれば一体何のために費用をかけて空調設備の改修工事を行ったのか,更には元来,店舗の設備設計段階に於いて吸排気のバランスのさせ方が悪かったのではないのかというところに迄問題の焦点が遡ってしまうと設計事務所に迄責任範囲が及びかねない。
 とどのつまり,その場しのぎというかご都合主義というか,トカゲの尻尾切りのような構図で元々何の責任もないはずのホシザキのサービスにしてみればとばっちりみたいな話だろう。(俺に談判させろよ)と言いたくなったが黒子でしかない俺がしゃしゃり出たのではホシザキのサービスマンの解決能力に疑問符がつく展開になりかねないので黙っていなければならない。歯痒い構図だ。

 サービスチーフ殿との協議ではガスフライヤーの修繕は行うべきではなく、空調設備の問題として解決してほしい,を押し通すべしと俺は念を押した。そもそも修繕を行ったところで事象に変化がでないのは明白だし,なまじ手をかければ今度は修繕の結果が思わしくないことを追求されて袋小路に追い込まれかねない。厨房の入り口に,例えばダンボールのような材料で仮設の障壁を取付けてみるとか,先に書いたように排気ダクトの終端を半分塞いでみるとかいった試みは特段金や手間のかかるものではないのだし,それは厨房屋の責任区分からは外れている。だから燃焼状態に問題がない以上,我々のすべきことはない。それが結論であってあとはこの所見をどこまで言い通すかという押しの強さにかかっており、それ以外には落としどころもないだろう。と俺は背中を押した。(この項続く) 
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