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コンビオーブンSCCの庫内ファンモーター交換(実作業編その4) [含蓄まがいの無用な知識]

 諸兄にとってはクソの役にも立たない記事であるのは承知の上で続ける。こんな独りよがりな記事でもどなたかには読んで頂けるのかと思うとその方の時間を浪費させることになっているのではないかと恐縮している。
 ファンホイールを外した後のモーター交換について,一見するとモーターケース直近では色々と錯綜していたり干渉していたりする箇所は多く見えるが,しかるべき道具立てで臨み,手順を守れば特に手こずる場面はない。
取り外し前の画像を再度示す。
IMGP0125.jpg

 当然ではあるがモーター左側のスチームジェネレーターは予め左下に移っているドレンポンプのプラグを抜いて排水を済ませておく。
 邪魔になるのはドレンポンプのアッパーホース(モーターケースの左側面を上下に結んでいるアイボリーのゴムホース)とモーターケースに取付けられた4個のSSR、モーターケース上部を左右に走る制御線である。
 SSRの固定刃SCSタイプからはトルクスビスで行われているのでこれを持参していなければその時点で作業は頓挫することになる。近年EU圏の製品では多用される傾向があるので修理する機会のありそうな方は購入しておいた方が良い。 また、モーターケースはアルミ製なのでSSRを取り付ける際にはオーバートルクに注意する。
IMGP0131.jpg

作業途中での撮影でモーターケースにはまだSSRが二個ついている状態だが大体こんな状態が一区切りである。
IMGP0132.jpg

モーターのマウントは13mmのナット4個であるkとは前回の記事で書いたが問題の二箇所である。モーターケースの厚みは大体100mmを少し超え,スチームジェネレーターの奥行きも200mmくらいあるのでスパナくらいしかレンチの持ち合わせのないサービスマンはここでタンクを取り外すというとんでもない付録に遭遇することになる。
難儀な場面を回避するためにはエクステンションバーを組み合わせてシャンク長が200mmを超えるくらいのソケットレンチが必要になる。
 
 些末だが,ナットを緩め終わって取り外す時にはかなりの確率でそのナットは脱落し,機体内部のどこか手の入らない場所に転がっていくので予め予備のナットを用意ししておいた方が良い。モーター取り付け後の固定ではワッシャを入れることが出来ないのでフランジナットを用意しておくのがベストだ。
IMGP0133.jpg

モーターを取り外した状態である。

 ファンホイールを取り外す記事でもそうだが,組立の手順はわざわざ書くことをしない。外した順番の逆を辿れば良いだけのことであってバカでも出来るから書くまでもない。
取り付け前の段階,破損品と交換品を並べた画像を示す。右側が破損品でSSR冷却用のファンの材質がアルミダイキャストである。交換品は樹脂製だが材質変更の理由は不明だ。
IMGP0134.jpg

 内部に三本のリブがあり,SSRとの接合面で生じた熱を冷却するフィンの役割を担っていることが理解できる。

 メッシュ状のカバーを取り外したところ。黒いモーターカバーは取り外せないがステーターの終端には羽根が組み込まれていてモーターコイルとインバーターを同時に冷却する構造で,前回の記事で書いた一石三鳥とはこういう構造のことを指している。
IMGP0135.jpg

 前機種のCPCではモーター出力750Wで同期速度は1440rpm(50Hz)だったがSCSでは450Wでハイスピード時の同期速度2000rpmに改められており、これに伴ってファンホイールも小径化されている。

 作業全般について言える事だが、粗悪な国内製品とは違って10年程度の稼働でも錆や歪みは大変少なく、全体の組み立て精度は高いので脱着の際に無用な苦労はない。
 ここ数年特に思うのだが、ヨーロッパ製品の電装系統は明らかに劇的な進化を遂げた。二昔くらい前までは旧態依然とした知恵の組み合わせであり,機体の内部には随所に日本製の制御部品が組み込まれていたものだが現在そういうことは全くない。そもそも殆どがカスタムパーツであり,汎用品はあっても聞いたこともない社名の海外メーカー製であり、当然その生産国は中国や東欧圏である。

 たかだかオーブン一台で何を大袈裟な,と嗤われる方は多くおられると思うが俺には何か,こういう機材の整備を通して少なくとも俺の携わる業界はますます世界標準から置いてけぼりを食らうその下限が歴然としつつあるように思えている。(この項終わり)
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くるみ

私は機械の事や専門用語は解りませんが、連続小説の様に楽しく読まさせて頂きました。それにしてもマニュアル本よりも細かく解説しており現場で経験した所見は素晴らしいですね!! マニュアル以外のやり方もあるのだと、私の職業の分野でも勉強させて頂きました。600回おめでとうございますd=(^o^)=b これからも楽しみにしています(^o^)。
by くるみ (2014-05-31 13:02) 

HarryTuttle

くるみ様,拝読いただいてありがとうございます,
いつの間にか600回です。根気のない私がよくこれだけ続けられたものだと我ながら妙に感心していますが,単に閑人だからでもあります。
 しかし,こういうことをする時間が欲しくて10年前に開業したのです。
by HarryTuttle (2014-06-01 13:26) 

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