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自宅のガステーブルは目下不調 [日記、雑感]

 オール電化住宅が普及してるとは言ってもまだまだ熱源としての油は根強いのではないか。
 俺の住んでいる築年数40年以上にもなる老朽住宅などはまさにその通りで,冬などは地獄のようにクソ寒い家なので電化など導入する意味は全くなく,この先家を新築するだけの甲斐性など俺にあるわけはないので死ぬまで火をたく生活は続く。
 当然台所にはガステーブルがある。やもめ暮らしの俺のような者でも自宅で飯の用意くらいはしない事もない。せいぜいインスタントラーメンをこしらえるくらいだが。

 何が原因なのかはわからないが,ここ二日ばかりそのガステーブルのうち片方のバーナーは不調である。



それはおよそ上のリンクに示した画像のような姿をしている。
 不調の状態としては,バックファイアーが起きており,燃焼中にゴーゴー音がしている。
 俺は商売人の端くれとして,以前記事で説明したかもしれないがここで再びバックファイアーについての能書きをたれようと思う。

 正常な燃焼というのは混合管を流れる燃料と一次空気の混合気の流速とバーナーの炎孔近辺での二次空気を取り込みながらの燃焼速度がバランスする事で得られる。前者が勝るとリフティングという現象が起き,これは炎がバーナー炎孔から浮き上がったような燃え方をし,混合気の流速が勝ち過ぎると燃焼が追いつかずに消火する。後者が勝るのが今回の状態で,混合管内部の未燃焼気体に炎孔近辺の炎が引火してノズルの出口から火がつき,混合管が振動するのでゴーゴーと音がするのである。家庭用のガステーブルでその状態を見る事は恐らく出来ないが造作の大雑把な業務用燃焼器具だとノズルから火炎放射器のようになって炎が出ている状態を見られる場合がある。

 未燃焼ガスの流速が低下する原因はバーナーや混合管内部の錆や異物の付着により流路の平滑性が失われ,内壁面近辺で多数の乱流が不規則に発生する事による。
 従って,バックファイアーが発生した場合の対処としてはノズル以降の混合管やバーナーを一旦取り外して内壁面の平滑性を復旧させる。異物の混入があれはこれを取り除き,錆が目立っているようであれば磨く。

 想定できる原因を更に広い範囲で考えた場合,燃料の供給圧が極端に低ければノズルから射出されるガスの速度も低下するので同様の現象が起こり得るが,現実問題としてLPGであれ都市ガスであれ発生する確率は殆ど無視して良く、ほぼ全て機材側に問題が起きていると考えて良い。

 ざっとこんなもんだ。剛業者の諸兄ならば既にご存知であって,今更俺のような者がここでわざわざ含蓄めいた一節をぶつまでもない。

 それで現在,このガステーブルの持ち主である俺の事だが,燃焼器具の修繕を生業としているにも拘らず,何の手も打たずに不調のまんまぶっ飛ばしているのである。片側のバーナーが使えればカップラーメンのお湯を沸かす事は出来るのだからそれでいいじゃねえかと適当にやり過ごしており,そのうち何日か経ってからトンカチか何かでバーナーを適当に叩けば直るだろうといういい加減な希望を持っている。

 少なくとも今,車から商売道具を引っ張り出してきてこのガステーブルを分解し,バーナーユニットを取出して中を清掃してやろうなどという気が俺にはハナクソほどもないのだ。何日か経ってバーナーをトンカチで叩いても直らなければこのガステーブルはお払い箱にして新しいガステーブルを問屋から買えばいいのだと俺は考えておる。当然その費用は経費として処理する。

 理由は簡単で,金にならないからだ。
 以前,ご近所さんの住宅で調子の悪いガステーブルを安請け合いして分解図も手に入れる事もせずにいきなり修理した時に俺はその余りにも入り組んだ構造に閉口して以来,こういう物体とは生真面目に関わる気がしなくなった。
 俺が日頃いじくり回している業務用のガス器具というのはこれらに比べると実に大雑把にしてがさつであって,多少適当な作業手順であってもどうにか目的の場所はいじくり回せるようになっているものなのだという事を俺はその時改めて知った。
 自宅のガステーブルも例外ではなく,ごとくを外してバーナー周辺の造作を眺めただけで俺はやる気をなくした。一円にもならん事でこんなややこしいものをいじくり回すのは真っ平御免である。燃焼器具の修繕は俺にとっては仕事であって趣味ではないのでこんな面倒臭い事は絶対しないと俺は断固たる決意でこの事態に臨むのである。

 自宅に戻ってからの職人なんていうのはおおよそどんな分野であってもこんなもんではないのか。
そういえば以前,仕事仲間の冷凍機屋さんに自家用車のエアコンに自分でガスチャージする事はあるのかと訊ねてみたら実に面倒臭そうな顔つきで「何で俺がそんな事しなきゃなんねーの?」と聞き返された事があった。ついでに書くと彼の自宅についているエアコンは家電量販店の下請け業者に施工させたものであり。勿論それが故障した時に自分で修繕するつもりなどさらさらないとの事だ。 
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007

確かに小生も自宅にある機器の修理は面倒な気もします、、、

それでも一応なんでも挑戦は試みます、、、
アナログ及びデジタル放送アンテナ工事、家電品(エアコンの冷媒系除く)、ガス風呂釜、ガスコンロ、ドアーキーシリンダー、家具小修理など、、、面白い面もありあます、それと発見も、、、
この発見が本業のヒントに成る事があるので愉快です(笑)。
by 007 (2014-05-11 18:49) 

やま

分かります!
私も1日中料理を他人のために「仕事として」していますが、
自宅へ帰るとお湯を沸かすのが精いっぱいです(笑)
職場のキッチンなら自分の賄いでも作れるのに...

かといって料理人が貧しい食生活で美味しい物が提供できるか、
という思いもあるので、なるべく家以外で食事をするようにしています。
by やま (2014-05-11 19:26) 

くるみ

ガステーブルの不具合はちょっと不便ですね(^^; でも自分で直さないのは納得です!! 昔、ホールだった時に調理師さんのお家を訪ねた時、ヤカンしかないのに驚きました。自分もお料理を仕事にして、しかも一人暮しの時は、自分の為の料理は いい加減になり腕が落ちる…とゆう言い訳でコンビニ弁当ばかりでしたm(__)m 今はお店の清掃は難なく出来るけれど 家の事は面倒で…。そんな物ですよねf(^^; やはり金銭が発生すると気持ちは変わりますね。
by くるみ (2014-05-12 00:07) 

HarryTuttle

007様,いつもコメント有り難うございます。
 私自身を思い返してみると,暖房便座や風呂釜など家の中のものをあれこれいじる事はありますが,概ねそれらが壊れて生活に不便を来たし,修理屋を呼ぶと金がかかるので何とか金を浮かせたいというせこい魂胆に根差しています。
 片や発見を求めての好奇心,私はと言えば目先の小金をケチっての悪あがきというところに007様との大きな差を感じますです。
by HarryTuttle (2014-05-12 00:13) 

Tongari

はじめまして。
同業(厨房機器含む設備機器修理全般)の者でTongariと申します。

日々楽しく拝見させていただいております。
いつも、拝見させていただいて思う事なのですが、僭越ながら
HurryTuttle様は、お持ちのスキル、知識からしても正当な評価とは程遠い評価を受けていると思われます。
どちらにお住まいかは存じ上げませんが、修理内容の難易度から察しますと、高度な修理に従事されていと思います。
ここではもちろんのこと具体的な修理代金には触れられていませんが、老婆心ながら、もっと代金をいただいてはどうでしょうか?

同業の私からも、それだけのスキルをお持ちの方は、そう多くはいらっしゃらないとお見受けします。

この国がタダの部品交換屋で埋め尽くされる前に、お持ちの技術の奥深さをもっと訴えてください。

乱文失礼しました。。
by Tongari (2014-05-12 09:17) 

HarryTuttle

やま様,はじめまして。コメント有り難うございます。
 仰る通り,確かに私が知る範囲では調理師の方で帰宅されてから手のかかる料理をされる方には心当たりがありません。
 但し,妻帯されている方についてはその奥方殿が料理上手である事が多いように思えます。世の中うまく出来ているものですね。

 機材の使用者である調理師の方のコメントは大歓迎です。大したブログではありませんがまたよろしくお願いいたします。
by HarryTuttle (2014-05-12 10:35) 

HarryTuttle

くるみ様,いつもコメント有り難うございます。
医者の不養生,紺屋の白袴,そういう事なのです。
世の中便利になって家のガステーブルの火口が一つ使えなくても毎度のご飯は何とかなるので余計面倒臭くなるのではないかと考えたりもします。
by HarryTuttle (2014-05-12 10:49) 

HarryTuttle

Tongari様,はじめまして。貴重なご意見を有り難うございます。
お褒めに預かり恐縮です。

 私は腰の座らない人間で,『自分はスキルに見合った評価を与えられていない』という不満と『自分のスキルはまだまだ未熟なものであって大成できそうにない』という不安の間をいつも揺れ動いています。
 このブログに私自身の作業記録を記事として掲載する事はありますが,日々の仕事の中には誤診も作業ミスも多々あり、それを根絶する事は出来ません。

 チャージ(請求額)の妥当性についてご指摘を受けたり自分で考え込む事はありますが,貧乏ながらも何とか食えているのだからまあいいか,と,なかなか考えがまとまらないまま問題意識を先送りし続けているのが実情です。

 一方にサービスマンの技量を判別する眼力に欠け,ただ『俺の都合に合わせて直ればいいんだ』という粗雑な使用者がおり,もう一方には『サービスマンなんていうのはエラーコードを丸暗記してパーツ交換を繰り返すだけのワーカー(Worker:作業員,労務者)で充分なんだ』と言わんばかりの製造元がおり,その間に立つ我々の立場は本当に色々な不条理に取り囲まれていますね。正直なところ労務経費の件については幾らか諦めの気持ちがあるのが実相です。

 ぼやき始めると長くなるのでこのへんで切り上げさせて頂きますが,お互い頑張っていきましょう。いずれどこかで修理屋の地位がもっと向上されるのではないかという根拠のない期待を私はまだ捨てていません。
 よろしければまた,貴重なご意見を頂けると有り難いです。これからもよろしくお願いいたします。

 
by HarryTuttle (2014-05-12 11:42) 

63H

立派な家に住んでいる大工さんも見ませんね~
by 63H (2014-05-12 21:17) 

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