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新規開店のツールショップにてガチで凹む [日記、雑感]

 俺が商売道具を買い込むときのルートは大体決まっていて,整理すると以下のようになる。
*住設,配管資材の問屋
*電設資材の問屋
*機械材料の問屋
 最初から捨て工具として購入する場合にはホームセンターのようなところで思いついた時に現金買いする。他に上記で手に入らないものはネットの通販で購入している。ここ2年ばかり注目しているフランスのFACOMの製品あたりがそうだ。

よく利用する通販サイト:http://jp.rs-online.com/web/

 RSは工具類もそうだが汎用制御機器ではない電子部品の在庫が充実しており,今では俺の住む町ではなくなってしまったオンボードパーツを扱う店舗の代わりとして重要性を増しつつある。

 ところで,連休を前にして昨日,実家でタウン情報誌らしきものを眺めているとなんと,俺の住む田舎町に工具の専門店がオープンするという広告というか,記事を見つけた。
 今日日,これだけネット通販が発達して市中の問屋では調達できないメーカーの製品でも手軽に,しかも10年くらい前から比べると驚く程安価に購入できるようになった中で,わざわざ店舗を構えて開業するという事は余程何か特別な調達ルートでも持っている業者なのかと俺の好奇心が膨らんだ。
 それで,俺は今日,用足しついでに冷やかし半分でその工具専門店を覗いてみようかと思い立った次第だ。

 その結果を先に書くと,俺は痛い目に遭った。目下俺は非常に頭に来たり後悔したりしながらこのテキストを書いておる。
 しかし俺はここで,このロクでもない工具専門店の屋号や所在を明かさない。俺は自分の蒙った不条理を誰か他人になすり付けて八つ当たりしたい気分になっているのでこの工具専門店の餌食となって俺のような憤懣を持つ哀れな子羊がこの先どんどん出てくればいいとまじめに考えているのだ。
 上に書いた事は半ばネタだが,実際の所この工具専門店はネット上では検索できない。実名を挙げれば営業妨害とか何とかいう難癖も出てくる恐れもあるので今回の事は変な冷やかし気分を起こした俺の愚かさの代償として我慢するしかないのだろうな。

 件の店舗は郊外の比較的通行量の多い路面沿いに開店していた。
店舗前の駐車場には黒い軽自動車が二台停まっており,来店客ではなく店舗スタッフ二名の自家用車だった事を後に俺は知る。
 つまり,誰も客のいないその店舗に俺は一人で足を踏み入れた。
店内には愛想の良さそうな若いお姉ちゃんが一人いた。店舗は10坪よりも少し広い程度で大して広くはないので陳列されている商品もさほど多くはなく,全体にスカスカしていて量販志向の印象はない。
 置かれているメーカーはお馴染みのKTCやシグネットが中心で特に新鮮味はない。シグネットの製品で、現物を手に取って検討する事が出来るのは恐らくこの田舎町では初めての店舗なのだろうがこのメーカー自体はCPが売りのブランドであって特段,製品の出来が素晴らしいとかいう印象が俺にはない。良心的なメーカーだとは思うけどな。
 ざっと店内を見渡してみてここが自動車工具の店舗らしいという印象を俺は持った。特に飛びつきたい商品があるわけでなく,しかし冷やかしで帰るのもなんだか悪い気がして俺は店内を改めて見渡し,大特価と書かれているパーツクリーナーのスプレー缶に目が行った。お値段は税別290円のドライタイプだ。
 ドライタイプは使い勝手が悪く,あるときから俺は敬遠するようになったが一本290円くらいならまあいいか,と手を伸ばしかけるとお姉ちゃんは「パーツクリーナーはオープン特価で半額になっています」とのたまう。半額だったらもう一本買っていくかと俺は二本取出した。お一人様三本限定ですからもう一本いかがですかとお姉ちゃんが奨めるのでもう一本買う事にした。

 「他に何かお要り用のものはありませんか?」と姉ちゃんは俺の汚い顔を覗き込むようにして訊ねてきたのでかねがね思案してきた事を問い合わせてみた。
 それはインチサイズで,ロックボールではなくピンとOリングで固定するタイプのインパクトソケットを探しているというものだった。俺の経験則では国内製よりも海外製の方がソケットの耐久性は明らかに高いのだが,上の条件を満たす仕様は国内製のKoken製しか見つからずずっと購入を考えあぐねていた。

 俺のリクエストは姉ちゃんの商品知識を逸脱するものだったらしく,お姉ちゃんは一旦,事務所と思しきドアの奥に引っ込み,少ししてからKokenのカタログを持参して現れた。やはりそういう選択肢に行き着くしかないのだな,と俺は思った。
 しかしKokenの製品ならば別段この店で購入する理由はない。俺が普段ツケで買っている機械材料の問屋で取り寄せてもらえるからだ。一旦断ろうかと考えたが成り行き任せな気分でカタログを開き,その後顎が外れそうになる場面が来るとも知らずに3サイズ位を注文した。

 少しして事務所からは店主と思しき兄ちゃんが現れた。黒いツナギを着てリーゼントヘアーのなんだか少々軟弱そうな男だ。
 取り寄せの場合は前金で会計させてもらいたいと彼は冷たい目つきで俺に言った。顔は笑顔だが目は笑っていない。俺はイヤな予感がしたが大して高価なものでもないのでそれには応じた。
 それで主と思しき兄ちゃんはたどたどしい手つきでレジを打ち始めたのだが、その様子を眺めている俺は思わず口をあんぐりと開けたくなった。
 彼はインパクトソケットの値段をカタログに表記されている定価で弾いているではないか。

冗談ではないぞ。

 掛け率を正確には覚えていないが,ソケットのようなものはどこで買おうが定価販売なんていう事は絶対にないのだ。しかも前金だ。この店は一体どんな仕入れをしているのか。
 続いて彼は俺の購入したパーツクリーナーの金額を打ち始めた。290円という金額で彼は三回レジのキーを叩いた。明らかにレジの扱いに馴れていないがそれはまあいい。パーツクリーナーは半額ではなかったのかと俺は姉ちゃんに水を向けた。姉ちゃんはビー玉みたいな目玉をきらきら光らせながらこう答えた。
「半額で290円なんですよ」

 それでは正価では580円という事なのか!


【ProTOOLs】ブレーキ& パーツクリーナー 840ml

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  • 出版社/メーカー: ProTOOLs
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 上のリンク,Amazon.comでは同一商品が398円で販売されているがそれにしたって高い。ドライタイプのパーツクリーナーなんていうものはブランドさえ選ばなければホームセンターのようなところでは一本200円くらいの売価でで山積みされている。

 ソケット3個の全額前金とパーツクリーナー3本でお買上額は大体4千円強で既にこの時点で俺は不快感を募らせていた。通常取引している問屋ならその半額程度で済む買い物だ。
 しかしこの店の阿漕さはこれで終わらない。会計を済ませて店内をうろついているとカタログの並んでいる一角が目についた。メーカーを見るとKTCだったりTONEだったり、あるいはエスコのような商事会社だったりで特段目新しいものはない。全部俺が日常取引のある問屋のフロントに常備されているもので,問屋が無償でくれたカタログもあらかたそこにはあった。RSなどは最初のオーダーで届いた商品にまるで辞書みたいにクソ分厚い総合カタログが無償で同梱されておりその時は結構驚いたものだ。

 何の気なしにカタログのページをめくる俺にお姉ちゃんが話しかけてくる。
「カタログを持っていると注文がしやすくて便利ですからいかがですか?」俺はそこに罠の気配を感じ取った。俺の脳味噌は大して上等ではないがそこまでお人好しのバカでもないのだぞ。もしやと思いタダでくれるのかと訊ねると案の定,顔つきを曇らせてカタログは有償ですとお姉ちゃんは返してきた。
 工具のカタログはなかなか金のかかった印刷物であり,有償である事は決して理不尽だと俺は思わない。事実,KTC やTONEの総合カタログは裏表紙に金額の記載があるし、通販サイトでは海外メーカーのカタログを有償販売してもいる。
 しかし俺は自分の習慣として,問屋で工具類のカタログを買った事はこれまでただの一度もないのだ。(駄洒落ではないぞ)工具メーカーのカタログなどというのは大体フロントのカウンターに平積みされていて取引先が勝手に持っていっていいものだとばかり思っていたのだ。さすがに一人で同じカタログを何冊も持っていくようなけしからん輩は問屋には現れないので問屋も無頓着で、いちいち客がフロントにへばりついてああでもないこうでもないと口頭でやり取りをするよりもカタログを持ち帰って自分の事務所で好き勝手に検索してから問い合わせしてくれた方が手間が省けるからだろう。

 上に書いたような事を手短にお姉ちゃんに伝えると彼女は苦笑いしながら言い出した事を引っ込め、俺は苦々しい気分で店を出た。
 帰宅する道すがら,不条理を噛み締めながら俺はその正体について色々と思い返していた。題材を変えてこういうシチュエーションが俺には何度もあったはずの経験はすぐに記憶に蘇ってきた。

 それは悪徳スナックだとかキャッチバーだ。若い頃に何度か,俺はそういう場所で痛い目に遭った。擦れっ枯らし女を相手にビールを一本飲んで店を出ようとしたら一万円くらいの会計が来て腰を抜かしたあの感覚に近い。酷い店だぜ全く。
 更にここから俺の妄想が膨らんでいく。
もしかしたらその店は新手の取り込み詐欺みたいな稼業なんじゃないのか?
Kokenのソケットみたいなものに定価で全額前金などという決裁方法はどうも胡散臭く思えるのだ。
店長だか店主だかわからないが,先に書いた兄ちゃんが手にしていた注文書には俺以前に数名分の記述があった。彼らも俺と同じように何かを発注するにあたって全額定価の現金先払いで決裁を済ませているという事な訳だが、ほんとに商品は届くのだろうか?ある程度の金をかき集めたらいきなり閉店してどっかへトンズラを決め込むような真似はしはしまいか。店舗内のスカスカした商品の陳列状態を思い出すにつけ俺はそういう疑念を払拭し切れないでいる。 

 世の中が荒んでくると人心も同じく荒んでくる。俺も間違いなくそのうちの一人なわけだ。一回きりのお買い物で、まあ頭に来るが授業料だな。やはり長年取引のある問屋は大事にしてあげなければ,というのが今回の教訓である。
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コメント 4

007

結論から先に言いますと・・・直ぐツブレそうな店ですね、、、
なんか、昔の、VHSビデオ全盛初期のソフトレンタル屋を思い出しました、、、

借りたソフトが、画像の乱れた箇所があることを返却時に指摘しました、別にクレームではなく、一応伝えたほうが今後の貸し出しの一考になるかと、、、
しかしながらそのアンチャンは、「それは失礼しました何かサービスしますよ」と愛想良く対応し、奥へ引っ込んだらそのまんま、、、あほみたいに待つのは嫌なので催促したら態度一変!「いるんだよね、因縁つける客が!」と、、、不機嫌な表情に驚き、堅気でない奴を相手するのは危険と想定し早々撤退しました、、、

後で真相が判明して、、、友達が借りて7日期日を無視して二週間以上放置してたら催促されて、店に出向くと日本刀を振りかざす恐いニイサマが出てきたそうです(笑い)。。。
by 007 (2014-05-04 03:29) 

くるみ

前払いなんてあるんですね。着払いで現物と交換なら安心だけれど。最近見なくなりましたが以前 小さいブースでお年寄りを集め荒稼ぎし一週間以内に撤退する商売ありましたね(*_*)。夜の繁華街…お姉様のいるお店は乾物で高いチャーム代を取り、たいしたサービスでもないのに高いサービス料…。働く側も心苦しかったです(・・;)。
by くるみ (2014-05-04 08:16) 

HarryTuttle

007様,いつもコメント有り難うございます。
 全く仰る通りで,姉妹店を持たない侘しいビデオレンタル屋のムードに似ていますわw
 一旦足を踏み込むと冷やかしで帰る事に重圧感を覚えるようなムードでしたね。
「入りやすそうな店舗」の事はよく話題に上がりますが『出やすそうな店舗』の事は何故かそうならないような気がします。

 日本刀を振りかざす恐いニイサマが要求した延滞金は一体どれくらいだったのでしょう?いや,考えたくありませんね,その場面の事は。
by HarryTuttle (2014-05-05 11:38) 

HarryTuttle

くるみ様,いつもコメント有り難うございます。
殊更詮索はしませんが随分多彩な経歴をお持ちのようですなw
そういえばその工具専門店のツナギの人物を思い出してみるとなんだかキャッチバーのボーイとかにいそうな面付きだったような気もします。

 気のせいか,その類いの商売の従事者は大体淀んだ目をしていて今にも他人をとって食いそうな表情で,何というか切羽詰まったムードを漂わせている事が多そうに覚えています。恐いわー
by HarryTuttle (2014-05-05 11:46) 

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