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改めて責任区分について考えたい(1) [修理屋から見た厨房機材]

 下の画像は某総合病院の食器洗浄セクションで、食器消毒保管庫が3台並んでいるところだ。

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 上部を写しているのはこの食器消毒保管庫の熱源が蒸気である事を示したいからだ。
 この保管庫は約20年前に俺がまだ勤め人だった頃納入させて頂いたものだ。驚くべき事に当時,その病院では食器の消毒を煮沸消毒槽で行っていた。既に取り壊されたその建家は昭和30年代に建てられたもので,当時は給食の食器類は煮沸消毒が標準だったわけだが何せ煮沸消毒槽で熱源が蒸気という事は単に一槽シンクに吹き込み用の蒸気配管とサプライのバルブがついてるだけの単純極まりない構造なのでどこもぶっ壊れるところなどなく,修繕と言えば摩耗したバルブとか水漏れのする排水共栓を交換する事の二つしかないのだから誰でも出来るし幾らでも修繕ができる。

 今日日の感覚でいえば火傷の恐れがあるので煮沸消毒槽など選定される事は殆ど全くと言って良い程ない。件の病院では運用後20数年してさすがに世の中色々便利なものが出てきたのでもっと安全な熱風消毒に切り替えようという判断がなされたのが20数年前だった。
 食器消毒保管庫の熱源はガス,電気,蒸気とあるが現在,販売されているものの半分以上は電気を熱源としている。ガスだと燃焼排気の処理のための付帯設備が必要なため導入コストの総額が高くつくし,蒸気だとそもそも蒸気ボイラーが備わっていないと使えないからだ。
 その病院は当時,350床くらいの大きな病院で,築年数が古い上に竣工以来色々な機器類を追加導入したせいでそもそも受電室のトランス自体が容量的に苦しく,1バンク増やすのも現実味がないので蒸気加熱式の食器消毒保管庫という選定に落ち着いた。

 それで今から15年くらい前にその病院は移転新築したのだが,旧病院で使っていた蒸気熱源の食器消毒保管庫はまだ減価償却が済んでいなかったのと移転先の新病院でも蒸気熱源が用意されているため移設して継続運用する事になった。冒頭の画像はその後,現状を表している。

 移設後しばらくは特に何の問題もなく運用されていたのだが、この保管庫はあるときから庫内温度の立ち上がりが良くないという不具合が出始めた。
 ガスや電気と違い,蒸気熱源は病院施設に於いて必ずしも24時間安定供給されるものではない。オペの際の手術器具の殺菌には現在,単独でオートクレーブを持つのが常態化しているし,エアコンや温水暖房の高性能化や低価格化で蒸気暖房も減少する一方だから蒸気ボイラーなどというややこしくて物騒なものは段々日陰に追いやられているのがここ30年くらいの空調機械設備事情ではないだろうか。
 対して,食器洗浄の業務が終了するのは一般に,遅くて午後8時である。昇温の立ち上がりが悪化すると消毒が完了しないで翌朝まで庫内のブロワーが回りっ放しでいる不具合を生む。

 少し脱線するがここで食器消毒保管庫の動作を追ってみる。
一般に保健所が指導する食器消毒保管庫の運転条件は温度は80℃以上,時間は30分以上がその目安である。ここで注意すべきは時間であり,30分というのは運転時間全体ではなく,80℃以上の状態を最低限30分以上維持せよという意味である事に注意されたい。室温の状態から起動させて庫内温度が80℃に達するまでの運転時間は含まれていないと補足しておく。
 これを受けて製造元の仕様としては起動させてから設定温度に達し,温調機が動作したその時からタイマーのカウントを開始するという制御を行うようにしてある。

 という事は,この病院の場合,起動させてから一時間以内に庫内温度に達しない場合は午後9時になるとボイラーからの送汽が止まるのでタイマーによるカウントが始まらないまま翌朝まで庫内温度が生温いままでブロワーが一晩中回り続ける運転状態となる。

 蒸気式の食器消毒保管庫に限らず、機器の不具合は全てと言っていい程、その機器自体の障害として修繕の依頼がくる。
 ややこしい書き方とは思うがこういう事だ。
機器類というのは全て,給水の圧力とか温度とか,給電の電圧とか,要するに上流の条件を全部満たしていなければ所定の機能や性能はギャランティされない。
 だから機器の不具合が起きている時,まず最初に行われるべきは不良発生箇所の特定であり,それは責任分解店のどちら側にあるのかを特定する事だ。稼働のための周辺条件が満たされていないのか,それとも機器自体に故障が起きているのか,と言い換える事は出来る。
 経験則から言えば,発生する不具合の殆どは機器(負荷)自体の故障によるが周辺環境が原因である場合も皆無ではない。(長くなりそうなのでこの項続く)
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