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理研機器ゆで麺器修理の経過(3) [含蓄まがいの無用な知識]

 交換用の湯槽が届き,実行編となる。

前記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-09-28

 実は,俺はこれまで理研工業のゆで麺器を修理したことがない。出回り数が多くはないことと製品自体単純な構造で故障が少ないことの両方がその理由だ。
 一つ気になったのはこのゆで麺器は湯槽がどのように組みつけられているのか見当がつかないことで,どこからどう見てもビスやリベットが見当たらない。
 元の勤務先でもゆで麺器は製造しており,湯槽の交換は結構手間を食う作業だったので事前に作業手順くらいは頭に入れておこうと思い,製造元に電話して訪ねたところ交換は簡単で特に道具らしい道具は必要ないと言う。

 それで,交換用の湯槽が届き,梱包を開けて現物を取出してみるとどこにもビス穴が明いていないので俺はひびの入った油槽の縁にマイナスドライバーを差し込んで力任せにこじってみると呆気なく浮き上がってきた。ただ単に,外装の枠に落とし込まれているだけの構造だったのだ。
理研 ゆで麺器-11.jpg

 湯槽を引き抜いたあとを上から見たところだ。本当に呆気なく外れる。
 但し,理研機器の名誉のために書いておくと,単に落とし込むだけの構造であるということはそれだけはめ込みの精度が出ているということでもある。一般的な厨房屋の製品だと外枠に湯槽をはめ込んだだけだとかなり大きなガタがある。だからビスなりリベットで固定しなければならない。
理研 ゆで麺器-8.jpg

 取り外した破損品。白く粉を吹いたような状態になっているのは漏れた水が伝った跡で、下方からの加熱によって水分が蒸発した結果,鉱物質が張り付くようにして残ったものだ。
 左側に見える黒い三角状の跡は煤で,燃焼中のバーナーに水滴が落下して燃焼温度が下がることで発生する。

理研 ゆで麺器-9.jpg

 交換用の湯槽。何事につけ新品の輝きは安心感を与える。

 先に俺は理研のゆで麺器は製作寸法の精度が出ていると書いたが,これを言い換えるとはめ合わせがきついということでもあって湯槽を落とし込む時に少しでも傾けるとつっかかってなかなか入らない。唯一コツを要する場面である。
理研 ゆで麺器-12.jpg

 繰り返すが,新品は気持ちがいい。

 事前に作成した見積りではそれなりの交換作業費を想定していたので『これは儲かったわい,俺の人生,たまにはいいことあってもバチはあたらんだろう』と俺は内心ほくそ笑んだ。
 が,しかし,世の中そんなに甘くはないのだ。どこに落とし穴が待ち構えているかわからんのだ。

 上に示した新旧の湯槽の画像を見比べて頂きたい。右上の方,加熱パイプの近くに突き合わせ溶接された配管は湯槽の排水配管なのだが歴然とその位置は異なっている。
 つまり,湯槽の交換に伴って排水配管は一部加工しないと排水の立ち上げ位置と合わない。今回のケースで言うと横引き部分の長さを詰めなければならないのだがゆで麺器の排水取出し位置と床に埋設された排水立ち上げ位置が少しの芯ずれであり,接続できない。

 俺は落胆し,頭に来た。問い合わせの時には製造番号まで伝えてあるのだから製造元はロットまで割り出せるはずであり,現行品の湯槽は問い合わせのあった個体とは配管の取出し位置が異なっている,よって交換作業の際には排水配管の変更が付帯作業として発生することくらい事前に教えてくれても良さそうなものではないか。こういうところがこの業界の適当さなのだ。
 
 現場が市内で,規模の大きな病院であり,俺が長いこと出入りさせて頂いていることが幸いした。
俺は病院の売店で買い込んだ缶コーヒーを持ってボイラー室を訪ねた。そこには配管のねじ切りマシンがあるからだ。ボイラー技士に愛想笑いともみ手で缶コーヒーを渡し,平身低頭でねじ切りマシンを使わせてもらうお許しを頂き,そこら辺にある鉄管の端材を切り出して外来食堂に引き返し,どうにか収まりを付けた。

 こうして作業が終わってみると,湯槽の交換そのものは全体作業のうちの大した比重を占めていない。半分以上は応急処置と届いた湯槽の整合性が取れていない部分の手直しであり,この件全体で言うと事務方とのやり取りに費やした時間は作業そのものよりもずっと長いのだ。
 とは言え,とにもかくにも一段落ではある。使用者の事情によってはリプレースに近い費用をかけてでも修繕した方が好ましい場合もある,という一例でございました。(この項終わり)
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くるみ

3部構成の物語を拝見させて頂きました(^o^ゞ。長年働いた機械とこれから働く新人機械と、世代交代ですね。取り寄せた物が多少違うのは、過去の記事でもありましたよね!?靴が同じ左足だったみたいな^^; それでも対応出来るところが流石ですね。私も思ったのと違う食材が届いた時に臨機応変に対応出来る格好良い人材になりたいです。
by くるみ (2013-10-02 22:53) 

HarryTuttle

くるみ様,いつもコメント有り難うございます。
正しくは,稼働歴13年のゆで麺器の湯槽交換修理,となります。
固定資産の更新は色々と事務手続が大変なので高額ではあっても修繕して使い続ける一例です。

 人間社会に於いても,その社員の健康状態に問題はあるが過去に於いて功労があったので会社内に留めておくといった美風が過去にはありましたが今やすっかり夢物語,世の中は世知辛くなりました。
by HarryTuttle (2013-10-04 10:23) 

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