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大風呂敷を拡げる時には他人を巻き込むな [困った業者]

 会社四季報という株に関係した本を書店で立ち読みしていたら北沢産業の項で「24時間対応のサービス体制を売り込む」みたいな記述を目にして背筋が寒くなった。もう,たちの悪い冗談だとしか思えない話だ。

 まずは断りを入れておくが、俺は北沢とは良い関係にない。だからここで俺の書く事はそういったフィルターのかかった、上増し気味の否定的見解で感情論がかっていると指摘されても全面的な反論はしない。
 しかしそれを抜きにしても同業者間の風評に於いて北沢産業の修理が素晴らしいなんていう話は聞いた事がない。俺自身が接した何度かの場面でもおよそ感心できない事ばっかりだった。
 
どこの会社と言わず、今の厨房屋業界で保守業務24時間対応など全くもって絵空事でしかない。そういう運営体制の実現に最も近いところにいる会社は疑問の余地なくホシザキだが,販社レベルでサービスマンの24時間365日体制を思案し始めたのはもう20数年前のことだ。
 ホシザキの20数年前と現在では出先機関の数といい擁しているサービスマンの人員数といい段違いの成長ぶりだが、現在に至ってもホシザキは決して365日24時間対応などとは少なくとも表立って謳っているわけではない。
 現在,北沢産業の社員数は400名強であると聞く。その数は20年前のホシザキの一割にも満たないばかりでなく,俺が見る限り営業所レベルでは専従のサービスマンの存在さえ怪しく,営業技術職との兼務という何とも人使いの荒い勤務形態だ。
 現場レベルではかくもお粗末な運営実体の会社が一体どんなマジックを弄して365日24時間修理対応などという業務形態を実現できるのか。大風呂敷とはまさにこういうことを言う。

 俺には容易に想像のつく様相がある。
 修理専門の別会社を作り,コールセンターを設けて修理依頼は一切合切そこに押し付け,自分たちは商材を売り抜けるだけの会社になって身軽になる。
 そして実際に24時間365日,道具箱をぶら下げて深夜の0時とか元旦に修理に駆けずり回るのは北沢の社員ではない。サービス専門の別会社の社員でもない。
 もう少し詳細に書いておこう。
*時間でいえばウィークデイの昼間から夕方にかけて
*扱う品目でいえば自社製品や日常取り扱う汎用的な機器類
*作業内容でいえば特殊な測定機器や溶接機などの高額な装備を使用しないで済む軽作業
 こういう楽なところ『だけ』を社員が行い、残りの時間的,作業内容的にイレギュラーな修繕やややこしい不良判定を擁する場面は全て協力会社という部外者に丸投げする。いずれ北沢産業という会社がビジネスに加えるかもしれない24時間365日修理受付の体制とはこういうものであり、極論すればサービス会社などと謳ってはいてもその内実は電話の取り次ぎと修理代のピンハネしかやっていないような実体だってあり得ない話ではない。

 大体,北沢などという会社は自社の生産工場を持たない商事会社に過ぎない。
俺はここで,製造業と商事会社の優劣を付けたいわけではない。世の中全般で言えば物凄い専門知識を持った人材を擁する商事会社は山ほどある。しかし業務用厨房という分野について言えばそんな商事会社は俺の知る限り一つもないし,北沢も例外ではないということだ。
 
 得意先の前では出来もしないことで大風呂敷を拡げて安請け合いし,会社に戻ってからは都合の悪そうなところを仕入れ先や協力会社に全部押し付けておいて手柄は独り占め,というのは腹立たしい世の常だが厨房屋という業界に於いてはこれが実に幼稚なレベルで,しかも露骨に行われる。
 困るのはそれがしょうもない社員という個人レベルではなく組織立ったものとして行われることで,これは業界全体が品性に劣っていることを表している。

 だから問題なのは北沢産業だけではない。設備設計を行い,現場施工を行う総合厨房の会社は全ていずれこの動きに追随していくだろうし,その過程で仕入れ元の専業メーカーや輸入商社,俺のような自営業者を巻き込んで深夜や休日に理不尽な無理強いをして来る。これにはかなりの確信がある。
 
 「確信がある」というのは実は正しくなく,真相は『既にそうなりつつある』だ。
現在この手の商事会社も兼ねたような業務形態の,総合厨房を手がける会社については二社,俺は協力会社として取引があるが、どちらも依頼内容は概ね次のようなものだ。
*社外の仕入れ商品,同業他社の製品の修理
*深夜や早朝に作業時間が限定される得意先
*冷媒管に関係した修理(総合厨房を手がける会社のうち,これは社内で出来ない場合が大変多い)
*生産時期が古く,管理台数が極小になってきた機種
*日曜日や祝日の突発的なオンコール対応
*厨房メーカーがオンコールから時間を置いており,得意先が感情的になっている場合(これは事前に協力会社に明かされない)
 要するに,自分たちは定型業務と時間から時間の仕事だけをしたいので都合の悪いところは外部に押し付けるいいとこ取りとピンハネ体質の塊だ。

 更に始末の悪いことに厨房屋というのは深夜や早朝,日曜祝日といったイレギュラーな時間帯に於ける業務依頼に対する労務経費の割り増し請求を受け付けない。どこかで埋め合わせをつけるから今回は貸しにしておいてくれと言いながら返ってきた試しは全くなく,毎度うやむやだ。
 理由を問いただすと割り増し分を得意先に請求できず、請求通りの注文書を切ると赤字になるからだと言う。何故得意先に請求出来ないのかと追求すると,修繕費でがめつい商売をしているという印象を与えると次のビジネスチャンスがなくなる可能性があるからだとか。
 日曜や深夜に私生活を放り出して現場に急行することで請求額の割り増しが発生するのはがめついことなのか。これは依頼元の厨房屋というよりも使用者側の問題だが,それならばどっかのファストフードチェーンや居酒屋は営業時間外でも店長の自宅や携帯に電話をかけて腹が減ったと騒げばいつでも店を開けてメニュー通りの料金で飯を食わせてくれるのか。それが病院だったらどこでも24時間365日いつでも受信させてもらえるのか。自分たちができもしない事を周囲の業者には押し付けるような連中に媚びへつらい、振り回され続ける。こんな程度の交渉を得意先とすることも出来ない腰砕けの,何でもかんでも言いなりの情けない厨房屋が外部の協力会社に貧乏くじを押し付けて来る。
 厨房屋の謳う「24時間365日のオンコール受付体制」など所詮この程度のものだ。少なくとも,一人でその厨房にあるどんな機材だろうが修繕をワンストップで片付けていくスーパーマンみたいな社員がオンコールの一時間後に急行してくれるなどというバカな期待を使用者は持つべきでない。世の中全て,バカにはバカに見合っただけのものしかあてがわれないよう出来ているもんだ。
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くるみ

そんな仕組みなのですね…。確かに消費者は鵜呑みにしてしまいます。私はこのブログを拝見できているお陰で知られざる真実を勉強させて頂いてますm(__)m。そう言えば原発事故も本社じゃなく子会社的な人達が中に入り被爆してましたよね? 厨房関連でも社員より割増の報酬があれば まだ納得いきますよね。飲食店の、時間外に出勤してメニュー作れ!!のお話は笑ってしまいました。皆、自分に置き換えてみる事をしないのです(*_*)。
by くるみ (2013-08-24 21:50) 

HarryTuttle

くるみ様、いつもコメント有り難うございます。
とどのつまりは金次第、というわけです。使用者(消費者)の側が従量制の労務経費、時間外割り増しのシステムを受け入れない限りこのシステムは上手く回りません。

 機能を持った機材の導入で調理の労働を合理化するのは、一方で不測のトラブルによって支障を来すリスクをも抱え込むわけで、そこを24時間365日、外部に頼ろうとするのであればそれ相応のコスト負担が発生するのは全く当然な話だと私は思うのです。

 こういう人たちは障害が起きた時にはそれまでに享受していたメリットの事など忘れてただただ自分たちを被害者のように思い込みますが全く虫のいい話です。
by HarryTuttle (2013-08-25 14:19) 

くるみ

重ねてのコメントを失礼いたします。以前、スナック勤務をしてた時期に団体のお客様の予約入り、人手が足りないので派遣のホステスさんを頼みました。聞くと私達よりも時給が高く、その時は何となく不服でしたが、今思うと当然の事。こちらの不備を補っていただき即対応してくれるので。消費者の傲慢は増殖する一方ですね。これも不景気の爪痕でしょうかm(__)m。
by くるみ (2013-08-25 16:21) 

HarryTuttle

くるみ様,コメント有り難うございます。
 全てについて言えると思いますが,スポット需要に対応するというのは割高なものだと私は考えています。
 マネタイズされるかどうか予測し切れないものに対して供給側は投資して装備し,バイヤーからお声がかかるまではお金は入ってこないのですから高くつくのは仕方のないことだと思うのです。
 その最たるものは・・・・軍備でしょうか。
by HarryTuttle (2013-08-26 12:17) 

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