SSブログ

プログラムリレーの活用は普及するのか [お仕事上のぼやき]

 このブログではこれまでに幾つか,オムロンのプログラムリレーZENシリーズのことを記事としてきた。

過去記事名とURLを下に列記しておく。

「また来た変な客」とは俺のことだ:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-02-21
プログラムリレーのスターターキットが届く:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-03-01
プログラムリレーにはまり続ける日々:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2013-03-10

omron.jpg


 購入後、仕事の合間を見てちまちまと独学でラダーを組むトレーニングにいそしみ、現在は電気熱源の食器消毒保管庫と小型の食器洗浄機の回路図が俺のパソコンの中にある。そういうものが書ける程度には俺のこのボンクラ頭も習熟はしたという事だ。
 当然だが、PLCは決してそれ一個で全てをコントロールできる魔法の箱ではない。各種のリレーとタイマー、カウンターとコンパレーターが主な機能であり、センシング機器などの外部入力や出力リレーや保護パーツなどは外付けとなる。

 ここで、例えばボックスタイプの食器洗浄機について、PLCで制御回路のラダーを組む以外にどういった制御パーツが必要になるかを列記してみる。(注)すすぎ湯のブースターは別置きで熱源はガスであり、点火動作やその温調機能や保持動作は別制御でありここには含めない。洗剤やリンスの供給動作についても同様。

*入力系
1:ドアスイッチ
2:電源スイッチ、運転スイッチ
3:レベルセンサー(フロートスイッチなど)
4:温調器とその感温部分、またはベローズ式のサーモスタット

*出力系
1:リレー(電磁弁などのための接点容量の小さいもの)
2:電磁接触器(ヒーター負荷用)
3:マグネットスイッチ (洗浄、すすぎ各1個)

 各メーカーや機種によって必要なものも不要なものもある。量的な過不足も当然ある。ここで列記したもののうちにはその機体に既に取り付けられている制御パーツを流用可能な場合もあるし新たに取り付ける必要が生じる場合もある。

 明らかなのは制御の系統をまるっきり新調するにせよ、機体に既についているパーツを流用するにせよ、ワイヤリングはかなり錯綜したものになる事で、補修パーツとして供給の見通しが立たなくなったコントロール基盤を放棄し、PLCを用いる事によって制御系統を構成し直す改造は純正パーツとしての基盤交換よりも高額な費用となる事は間違いない。

 そうなると、この手の改造を実行するかどうかは費用の出所である使用者の胸先三寸となる。金額によっては食器洗浄機のリプレースを勘案する方が現実味がある、という場面はあり得る。

 ここで視点を少し変えてみる。
PLCを用いた制御回路の構成による修繕は、対象とする機材の筐体の大きさによって、有効性を持ったり持たなかったりもする。
 俺なりの見え方をここで示しておくと、でかい箱を持つ機材ほど有効性はある。具体的な例としては搬入据え付け後に間仕切り壁を造作してしまったせいで搬出できなくなった冷蔵庫や食器消毒保管庫などだ。箱さえ生きていれば何とかなる性格があるし、配線や取り付けのスペースにも余裕があるので改造は楽だ。
 逆に、内部の実装密度が高い卓上式のオーブンやレンジ類などは制御ボックスを外付けする事になるだろうから機能面以外にもスペースファクターの問題が出てくる。

 雑駁な結論としては、制御基盤が損傷して補修パーツの供給が見込めない場合に於いて、PLCを用いた代替回路を構成するという改造には普及の見通しがない。

 最低でも15年以上の長期運用を念頭に置いた機材であるとか、購入した中古機材で制御基盤が損傷したとかいった例外的なケースを別にすればこういう改造は言ってみれば密教的な、カルトチックな、マニアックな、といった際物的な位置づけから脱する事はない。

 販売する側からすると、制御基盤の損傷でその供給が絶たれているという状況はリプレースの口実として格好のものであり、ここでわざわざ多額の費用をかけてこのような改造を行う事は、特に製造と直販を兼ねる機材メーカーにとってはあり得ない選択である。
 使用者側からすれば、厨房機材などというものは実売価格が崩れてすっかり砂漠化した分野なのだから、減価償却が済んで大崩れすればリプレースを考えることには大いに現実味がある。
 何よりもこういった改造の施された機体は当然ながらメーカーのサポート対象外となるわけだが、厨房機材の分野というのは未だに大変未熟で、使用者の自己責任に則って改造するというカルチャーは今のところ全くない。業務用厨房機材は自動車や家電製品と同等の品質を有しているものであってメーカーの設計なり所見は絶対的なものだという誤った思い込みは未だに根強く、これが変化する兆しは今のところ全くない。

 そういう事情で、今年の春以来俺が取り組んでいる諸々の制御回路が実務の現場で活用される見通しは今のところ全くなく、これは田舎の修理屋が半ばホビーとして取り組んでいる試みに終わるだろう。 
 カスタムパーツとしての制御基盤をやめてPLCに置き換える事には技術的には大いに意味がある。その最たるものは制御の系統がブラックボックスではなく、ラダープログラムという可視化されたものとして示される事で内部の解析が可能とされるところにあると俺は考えている。
 PLCの機種によっては脱着可能なメモリーカートリッジを持ち、本体と双方向で書き込まれたデータであるラダープログラムのローディングが可能である。そうすると、
(1)PLC本体のプログラムをコピーして持ち帰り、データを吸い出して改良を加える。
(2)PLC内部のラダープログラムが壊れた場合にカートリッジ内のデータをロードして復旧させる。
といった措置が可能になるので、レスキューの確率は高まる。 

一般に、業務用の厨房機材に使われる制御基盤のうち、ROMソケットを持ちプログラムの差し替えが効く仕様のものは皆無と言って良い。基盤の損傷は機材の使用停止と同義と言って良いのであり、ここを回避できる可能性は出てくるのである。

 俺は折に触れて同業者にPLCのお勉強を呼びかけてみた事があったが反応は全くない。修理屋の仕事はパーツの交換であって設計サイドの仕様を改変するなどもってのほかという思い込みはここでも強固であり、俺はここまであれこれ書いたが最大のネックはここにありそうな気がしている。
 しかしだ、ごまめの歯ぎしりみたいな話で少々みっともないが、業務用の厨房機材というのはどんな拡大解釈も許さないほど考え抜かれたものなのか?修理屋の仕事というのはただおんなじパーツを取り替えるだけの作業員でいいのか?それは向上心を放棄したある種の奴隷根性とは言えないか?それでいいのか?
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事

nice! 0

コメント 2

くるみ

さすが、勉強家で向上心がおありですね(^o^ゞ 私は畑違いでの拝見なので 専門用語や仕組みなど解りませんが 凄い事なのは何となく伝わります。料理の世界では調理師は古来の食文化を伝承しつつ新たな料理を創作するとゆう役割がありますが、過去の方式を覆す様な創作的料理は、先輩方には疎外されます^^;。同業者に賛同されなくとも唯一それを出来るカリスマ職人さんになれたら格好良いですね(^-^)b。
by くるみ (2013-08-22 13:11) 

HarryTuttle

くるみ様,いつもコメント有り難うございます。

 うまくまとまりませんが,最新のもの,最先端のものが常に最良だとは限らないと私は考えています。
 調理のことを私は詳しく知りませんが,創作料理と呼ばれるものの大半は物珍しさで一度食べてそれっきりというのが大半だと聞きます。キャリアを積んだ調理師の方はそれを「盗作料理』と嘲笑していました。

 基本が出来上がっていての応用編であり,基本を身につけることは大変骨が折れます。
 基本がろくに出来てもいないのにやたらと応用編の小細工に走りたがっていい格好をしたがる悪癖が業務用の厨房業界には大変多く、使用者の方々の大半はそれを見抜く眼力を持ちません。
by HarryTuttle (2013-08-23 16:08) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。