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三菱重工の有り難いお言葉を拝読せよ [日記、雑感]

 金のためなら違法行為でない限り出来ることは何だってやる。野良犬稼業の姿はそういうもんだ。
本来は厨房屋の俺が農協の工場内でがさごそと何事かをやる場面だって当然ありなのだ。
以前にも記事にしたことのある某農協の某事業所構内のジャガイモ選別と箱詰めの工場である。
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 俺のようなゴミクズ自営業者がどうして農協と大っぴらに取引できるのかというと実はここの事業所長が俺の出身学校の先輩で,あるとき俺の貧乏ぶりを見かねてお仕事を恵んでくれるようになったというわけ。
 農協と取引をしていて大変有り難いのは請求書に締め日がないことで、つまり,事務方に請求書が届くと翌日には入金されるのである。この何とも気前の良い仕組みによって貧乏自営業のこの俺はしばしば資金難を切り抜けることが出来るようになった。

 工場内には何台かの灯油炊きの温風機があり,そのうちの一台が昨年来故障しており使えない状況が続いていた。製造元によれば17年くらい前に生産終了した機種なので故障部分の操作基盤は既にストックがない状態であり、故に修理不可能とのことだった。幾つかの業者が現調に訪れ,それぞれ提案したが金額的には不調であり。そんな中でボロクソ自営業の俺に声がかかった。
 俺はある筋を通じてこの製造元と交渉し,あくまでも使用者と修理業者の責任に於いて,制御系統の腕があるのならという条件であるキットパーツを出庫してもらう約束を取り付けた。
 それはどういうものかというと,特別に製作した基盤を送るから既存の温風機の機能パーツは動作の整合性が取れるように帳尻を合わせろという何とも粗雑な発想だ。そして特別な基盤は納期が約一ヶ月以上もかかる、製作には手間がかかるのでどうしてもそれだけの期間が必要だと製造元は言い張る。一個だけ基盤を製作するとはまた物凄い話で,さすがに重工屋だわいと俺は妙に感心した。故障した操作基盤の現物を手に取って見る限り,どうも製造元が言うほど高価な基盤には見えないのだが、一個だけ作るとなれば数十万円のパーツになってもおかしくはない。その製造元とは何を隠そう天下の三菱重工だ。

 代替基盤の価格には納得いかないが俺の作業費は押さえ加減にして,とにかく修繕の見積りを提出すると事業所長殿は飛び上がって『こんな値段で出来るのか!すぐ手配してくれ』と決裁を下した。
 改めて言うまでもなく俺は厨房屋であって,燃焼器具と言えばガス器具しかいじったことがない。三菱重工には制御のことなら腕に覚えがあるぜ,などとはったりをかましたが実は灯油炊きの温風機なんかただの一度もいじったことがないのだ。俺の見積り金額は大体35万円で,貧乏自営業としてはそう滅多にない金額だ。
 大風呂敷は拡げたものの,パーツの手配が間違っていたらどうしようだとか,ほんとに俺に温風機の修理が出来るのだろうかだとか心配しながら日にちが経ってブツが届いた。

 梱包を開けて基盤を取出し,まずは操作基盤だけでなく,頼んでもいない制御基盤が一緒になっていたことに俺はちょっとびっくりした。『特別な基盤』の実態とは現行製品の温風機部品をほぼそっくりそのまま送って寄越してきたのだ。拍子抜けしたのは現行機用の基盤を改造したというその内容で,何のことはないオンボードソケットにそれぞれリード線のついたオスのソケットがついていてリード線の片側に突き合わせスリーブがついているというだけのものだ。
 要するに,本体についている電磁弁だのCdsだののヤクモノのリード線を切って,対策基盤からソケットつなぎで延長されている各リード線の突き合わせスリーブに繋げということらしい。

 通常,代替パーツへの換装というのは機体の改造を伴うことが多いので図解入の丁寧な作業手順書が同梱されており,今回も例外ではない。
 ただ今回は,さすがに大三菱重工様だけあってこの手順書の冒頭に感動的な一文があったので俺はここで是非ともそれを諸兄に紹介しておきたい。

(引用はじめ)
MHU-7型制御変更要領書
1.目的
7型機に搭載された基盤の在庫が切れて補用部品供給が出来なくなった。供給義務期間は過ぎているが,市場からの要求があり,代替基盤にて対応する。

 どうだ皆の衆。いかにも「面倒見てやる」と言わんばかりのこの居丈高な物言い。日本国御用達,天下の三菱重工様にとってたかが温風機の修理ごときでギャースカ騒がれるのは全くもってしゃらくさいと言わんばかりではないか。俺は痺れたなw
 しかも『現行基盤の特別な改造』の実態たるや,先に書いたように基盤から各リード線を延ばしただけというのだから笑い過ぎて腹筋がちぎれそうだ。
 古い機械を修繕するにあたって代替パーツによる改造というのはこれまでにも随分やって来たが,手順書の冒頭にこんな勿体つけた一文を掲げる製造元は初めてだ。大体重工屋というのは堅苦しいというか高飛車な物言いをするところが多いが,俺が今でも行き来の多いIHIあたりは三菱重工に比べればもっと柔らかい感じがする。

 裏街道の野良犬業者としては,こういう場面をひょいひょいと乗り切り、一丁上がりを涼しい顔で決めて大重工屋をせせら笑うのが真骨頂だ。俺は燃えたぜ、どうだっ!
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動きゃあいいんだろw

 機体についていた配線図と手順書についていた配線図をかわりばんこに見比べ、ああでもないこうでもないと頭をひねりながら配線を繋ぎ替えていく。機体自体が初見で俺に経験則なり予備知識がないのと,新旧の配線図でパーツの呼称や図記号が違っているので配線を辿り、一個一個実体を確認しながらの作業となり少々手間は食ったが試運転は一発で成功した。やったぜ!(配線の処理は格好悪いが)

 と、ここまで書けばちょっとかっこいい話かもしれないがやり切れないオチが最後につく。
俺の修理見積りは大体35万円と先に書いたが,これはイカれた操作基盤のみの交換を想定してのものだったのであって,ややこしい配線のうじゃうじゃ出ている制御基盤の交換は三菱重工からの事前説明がなく,目下のところ経費請求が宙に浮いている。腹を決めてこの分の追加を来週先輩である事業所長様に相談する予定。

 それから,だが温風機の復旧に驚喜した農協職員が「こんな費用で直るなんて信じられない!」と俺に先立って現調を済ませた業者の見積り金額を教えてくれた,その内容を聞いて俺は大変がっかりきたのだよ諸兄。
某農器具メーカーの販売会社は外壁をぶっ壊して温風機をリプレースする工事として約500万、某空調工事会社は内容はわからないが250万くらいの見積書を提出していたのだそうだ。文字通り一桁違うのだ。

 俺の請求額は35万だ・・・・損こそしていないものの本当にがっかりきた。こんなことなら60万とか70万とか言っておくのだったと俺は目下,腹の底から後悔している。こんな調子だからいつまでたっても貧乏なのだな,俺は。本当に商才がない。
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007

通常、小生の場合、定番以外の修理及びそれに伴う電気工事は割高の見積をしています。

理由は、、、
1.プレミアム故、定番仕事との差別化を図る(特に事前調査要)。
2.想定外の追加(主に時間的負担)仕事が予想される為。
3.価格競争及び値引き交渉対応のため、プレミアムでしか儲けが出にくい為。

以上にて、想定以内に簡単に直ればラッキー!(^.^)で、超想定以上ならばガッカリ!(-_-;)となるわけで事前調査には時間と労力も掛かりますが、成功すると喜びを感じます(^-^)v、、、

自営継続にはある程度の金が要ります、、、まあ仕事=趣味みたいな部分もありますから、金の事はあまり考えないようにしてます、、、さもないと「バカバカしくてやってられない!」現象を生じますから、、、、(^_^;)。。。
by 007 (2012-12-23 16:25) 

007

PS.
三菱の体質は古いですね、、、

本田技研はモダンな図面だし、ダイハツは簡単に記載、、、
系列の三菱自動車の場合は古めかしくて堅苦しい雰囲気が図面から伝わり、其々特徴・個性があり面白く感じます。

度々のリコール隠し、遅れ等はその体質を端的に現わしています。
by 007 (2012-12-23 16:36) 

HarryTuttle

007様,今年もよろしくお願いいたします。
二つのコメントを一つで返すこと大許しください。
 『定番仕事』という規定のされかたを改めて意識的に受け止めています。
どんな業種にも『定番仕事』があり,出来ればそれだけで業務をが完結すればそれに越したことはないのでしょうが現実はそうでなく,イレギュラーな事象を誰がどのように処理し,その費用はどのように算定されるべきなのかを誰も考えようとしないことから発生する問題は多いように思えています。

 いずれこの辺は記事にしてまとめていこうと思っています。
by HarryTuttle (2013-01-03 10:12) 

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