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業務用冷蔵庫を業界の外側から見る [修理屋から見た厨房機材]

某総合病院のオペ室に組み込まれた冷凍庫の修理を先日やっと手がけることが出来た。

関連記事:オペ室の仕事は日延べ  URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-11-08
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 数度にわたるスケジュールの調整を経てやっと昨日、初めて資料を持参の上で乗り込み,仮処置を済ませて運転できる状態にまではこぎ着けた。
 その症状は冷凍機が運転されないもので、原因はコンプレッサー及びコンデンサーファンモーターをon/offさせるためのパワーリレー接点が焼損しており通電されないものだ。
 冷凍機は単相負荷であり,リレー接点は片切りで動作する。そのリレーは3回路の仕様で,うち2回路が使用されておりこのうちの1回路が冷凍機on/off用に使われているものだ。
 リレーコイル自体はまだ生きていたので冷凍機開閉用の配線を空いている一回路分の端子に繋ぎ変えてみたところ冷凍機は普通に起動したので俺はひとまず安堵した。
 このまま運転を続けても構わないが筋としてはリレーの交換を行って修理は完了となる。
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 こうして文字にしてみると俺の行った処置など実に呆気ない。
たかだかリレー一個を交換するために何故こうも話は長引き,もたつくのか。
前の記事で書いた事情の他,問題点としては医療機器メーカーの情報公開の厳重さがある。CTだのMRIをいじくり回そうなどという高尚な話ではない。そもそも俺にはそんな機器のことなどこれっぽっちも知識がない。たかだか冷凍庫だ。しかしこういう,ワイヤリングの技術で障害を回避するとなるとやはり配線図は欲しい。実態を一本一本辿って自分で配線図を書き起こすことは出来なくもないが全く効率的でないのでそれは避けたいのだが機体に配線図は添付されておらず,製造元にその資料請求をすると物凄く敷居が高い反応が返ってくるのである。

 その対応の悪さなり理不尽さについて俺は大いに不満があるがここでは詳しく触れないでおく。
本記事で強調しておきたいことは、この手術室用の冷凍庫のマシンスペックについてである。
 7年前に初めて修理を手がけたとき,俺は医療用の冷凍庫とはさぞかし精密な温調機能を持つややこしいブツなのだろうと予想していたがいざ実物に接してみると,これは全くの真逆で単純明快にして原始的な制御形態で動いていることを知った。
 一機種を見ただけで総論めいたことを言うべきではないが冷凍庫にせよ保温庫にせよ,直流回路とかプリント基板、半導体というものは一切使われていない。電気回路は全て強電回路、有接点のリレーシーケンスで組まれている。
 温調精度は荒く,省電力とは無縁の荒っぽい制御形態だが美点は確かにある。
それは他の機器類に関してもこれまで何度か書いてきた通り,こういう原始的な構成の機器はアクシデントに強い。メーカーの補修パーツを出庫してもらわなくとも町の電材屋や住設資材屋で調達できるパーツが結構あり,配線図が手元にありさえすれば電線の切れっ端一本でジャンパーを入れて動作確認なり応急用の強制運転が可能だ。特にメーカーの講習を受けなくとも教科書的な一般論だけで全てを見通せる,ここが重要だ。

翻って今日日の業務用冷蔵庫はというと、俺の見え方としてはだんだん家電製品ふうの作りになってきた。電装系はブラックボックスかがドンドン進みもはや配線図さえ手元にあれば何とかなるというものではない。不具合は意味不明のエラーコードで表示され,メーカーのサービスでないと迂闊に手が出せない。パーツの代用は効かず,修理代金はメーカーに生殺与奪の権を握られっ放しという構図は家電製品そのものだ。
 回転数可変速のインバーターコンプレッサーだとか庫内ファンモーターだとかいった仕掛けが本当に業務用として必須のものなのかが俺には大変疑問なのだが、だからといって見通しのいいマシンスペックであることが選定条件であるというバイヤーにも会ったことはない。ユーザーニーズというのはとどのつまりイニシャルコストが安くつくことであってそれ以外のことはどうでもいいというのが実情なのだろうが,そんな島国での小競り合いはいずれ例えば中国製の業務用冷蔵庫が上陸してくるようになったらまとめて吹き飛ばされてしまうのではないのか。家電製品がそうであるように,だ。
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007

シンプル イズ ベスト!ですね、。
by 007 (2012-11-20 04:13) 

HarryTuttle

007様,コメントありがとうございます。
機材全般について言えると思いますが,新しいものほど調整という作業を不要とする仕様になってきているように思います。
技術職としてはちょっと淋しいところです。
by HarryTuttle (2012-11-22 14:32) 

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