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某町役場から呼び出し [日記、雑感]

 某特別養護老人ホームの施設長様からご連絡があり,来週早々,某町役場に出かけることになった。

俺を物品納入業者として登録したいのだそうだ。噛み砕いていえば入札参加業者ということである。

奇特な役場だ。

 『何で俺なんだよ?』とは思うが辞退する理由もないし登録に金がかかるわけでもないのでお伺いはしよう。

 開業以来,俺は物販業務には消極的だ。もっとはっきり言えばやる気がない。
俺の住む田舎町は日本国に於ける貧乏人の集積地のような土地で,おまけに厨房メーカーの出先が無用に沢山あって不毛な我慢比べをもう20年以上も続けている。どこも目先の売り上げが欲しくてじたばたしており,一声かければ底値勝負の叩き合いなどいつでも起きる。

 だから俺は常々,俺からものを買ったって別に安くはならないんだよと得意先に言い続けている。安く買いたいのならメーカは幾らでも紹介するよとも言い続けている。一人親方の貧乏自営業としては、修理や工事くらいが身の丈相応なのであって機器販売なんていうのは年間通じて3,4回程度であり,契約金額にしたっていいとこ30万かそこらくらいが上限だと思っていたのだ。
 
 俺の最初の職場は販売部門と修理部門が厳然と分かれており、販売担当者の失敗が丸々おっかぶせられてくるような理不尽な職場だった。機会があれば詳しく書いておきたいが例えば,機器の選定ミスだとか周辺環境を考慮しない選定による障害とかいった問題までがサービスマンに押し付けられる無茶苦茶な職場で,当時あんちゃんだった俺は毎日毎日クソ面白くない気分で仕事をしていたのだった。

 こういうバカな出来事はそもそも販売担当者が無知で,製品の知識もないくせにとにかく契約書にはんこをついてもらうことだけに血道を上げる結果起きる。
 当時俺が思ったのは,修理屋が製品の販売をすればこういうバカな問題は未然に防げるのではないかということだった。
 その後の転職先は販売と修理との線引きがなく(人が少なかったからだ),それまで抱えていたジレンマから一旦は解放されたことにはなる。
 しかしこの,販売担当者が設置工事を行い,運用後の修繕も行うというのは考えてみれば自営業そのものじゃないか、と,その後気づいた。貰う給料は固定制だが実務内容はまるっきりの自営業だ。

 それから俺はレイアウトプランを立てて設備図面を書いたり工事現場の施工管理することも覚えることを余儀なくされ、自営業者まがいの度合いは更に強まった。文字通り,ゆりかごから墓場までを一人の厨房屋が行うわけだ。

 俺の性分のせいもあるのだが,始まりから終わりまで一貫性のある、筋の通った仕事が実現できる反面,重苦しい責任感にもつきまとわれることになるのだな。
 納入実績がある程度積み上がってくると得意先の修繕にスケジュールが埋められてしまって新規得意先の開拓のために営業する時間が残らないという新たなジレンマがここに生まれる。おまけに自分が選定して納めた機器類となると修繕するにもついついムキになる。10年かそこら使って大崩れすればリプレースを勧めればいいものを何がなんでも無理矢理引っ張り続けて15年も20年も動かそうとする。雇い主だった会社からすればこういう修理屋は無用の長物である。俺はいい社員ではなかったのだと今は思う。

 人を増やせば解決するのだが,会社にとって人件費くらい大きな負担はない上に俺には後進を育成する能力がからっきしなさそうなのだ。

 だから8年前に開業するときに考えた運営形態は、物販業務はなるべくしないことと業務を拡張して社員を雇うことにはしない,大きくはこの二点だったわけだ。修理代という小金を拾い続けて食いつないでいくのが身の丈相応と割り切り,物販業務や新規施設のプロジェクトなどは元の勤務先に振り続けていた。

 しかしだ。
人間社会は誰の意図ともいえないうちに,自然発生的にひずみや軋轢を生み出していくものらしい。
ビジネスチャンスを振られた先は,最初のうちこそ筋を守っているが段々なし崩し的に横紙破り風の振る舞い方をするようになる。
 紹介した得意先での発生案件について,始めのうちこそ設置工事の注文書を発行してwin-winの関係を見せるがそのうち威張りの効く子飼いの設備業者とつるみ始めて俺は蚊帳の外だ。得意先で発生する修繕にしてもいつの間にかその会社のサービスマンが取り仕切るようになって俺のところに回ってくるのはそいつの出来ないような依頼内容のものばっかりで,要するにつまみ食いとかババ抜きみたいな話だ。とどのつまり,厨房屋に限った話ではないのだろうが会社の販売部門にとって現地の協力会社なんていうのは得意先にとっかかりを作るための踏み台みたいなものでしかないという視線を最近の俺は元の勤務先に向け始めている。

元々力などハナクソほどもない零細自営業なので感情的になっても始まらないのだが,身辺やスケジュールがちょっと空き気味になってはきたので少しは物販にウェイトを置いてみる時期かもしれない。そういう意味では,今回の登録は意識を切り替えるいい機会ではある。
タグ:販売 入札 役場
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