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せがめばなんでも実現すると思うな [困った客]

 一部例外を除き,農家とか農協関連のお仕事は結構割りがいい。何故だかこちら方面の得意先は妙に気前がいいのだ。
 しかし,世の中金で片のつかない話はゴマンとある。金で解決で来たにしてもちょっと現実味のない話というのもまた同様。

 先月末,俺はある農家でパッケージエアコンの工事を行っていた。

記事URL:http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-05-31

 事前に話していたこととして,運転時の温度帯を冷蔵庫と一緒に考えてくれるな,同じ冷媒による冷凍サイクルであっても冷蔵庫とエアコンはミサイルとロケットくらいまるっきり別のものだということをご理解願いたいと俺は噛んで含めるようにして主に言って聞かせた。

 一体どれくらいの温度まで冷やせるのだろうかと訊ねられ,俺はゲージの目盛りを思い浮かべながらせいぜい20℃をちょっと割り込むくらいでしょうと答えておいた。
 主殿は観念し,それで構わないから工事は進めてくれとのことで俺はとっかかった次第。

 工事はすったもんだしながらも片付いた。
試運転を行ってみるとR-22を規定量封入して蒸発圧力はおよそ0.3MPaを示した。吹き出し口の温度はおよそ15.6℃だろう。リモコンの温度設定下限は18℃だから逃げようのない底打ちとなる。
 
 問い合わせがあった当初説明した通りの結果であり,青果類の保管に最適な温度とは言えないが主殿の持ち込んできた機材がそういう性質のものなのだから仕方がない。
 試運転での冷え具合を確認してもらって主殿は「まあ,こんな感じなんだろうねえ」と一応納得していたようではあった。

 しかし俺の経験則として,こういう反応は割り引いて受け止めるべきだという刷り込みがある。
引き渡した直後に条件付きの納得を示すという反応は必ずその後幾らも経たないうちに不満を覚えるものだからだ。
 案の定,主殿からはその後数日してからもっと冷えるように出来ないだろうかという問い合わせがきた。
冷え方の特性については既に説明した通りであって何しろパッケージエアコンなのだから調整しろなどというものはどこにもないとしか答えようがない。

 すると主殿は改造は出来ないかと食い下がる。
改造と聞くと俺の中のある部分は発火点に達するのだがそれは押しとどめた。やってやれないこともないのだろうが結果については一切責任が持てないし費用が幾らかかるのかの事前予測も立たない。

 そのとき,俺の頭の中に浮かんだアイデアはこういうものだ。
(1)室内機の冷却器を改造してキャピラリーチューブを外して膨張弁に変更。
(2)コンプレッサーは室外機の基盤制御をパスして汎用サーモと電磁弁と圧力スイッチを組み合わせた古典的にして単純明快なシステムとする。
(3)但しこの時,室外機の発停はリモコンのコントロール下でなくなる。

 主殿は某所からこの中古エアコンを引き上げてきたときにリモコンを紛失しており,何と二万円也の純正ワイヤードリモコンを購入したばっかりなのだ。(というか,今回はサードパーティ製のリモコンが使えない)

 大体このエアコン自体が12年落ちのロートル機なのだ。コンプレッサーが停止するときにはガラガラと不吉な音がする。せっかくタダで手に入れた機体だがくたばるのは時間の問題だろう。金のことはいいからと主殿は太っ腹なところを見せてくださったが遮二無二改造したところで機体の寿命を考えると投資効果が期待できない。
 今となっては詮無い話だが,冷蔵庫として使いたいのであればちゃんと予算を組んでしかるべき機器選定を行うべきだと俺は躍起になって説得した。昼過ぎに出かけていって結着がついたのが夕方近く。俺は結構くたびれており,最近,誰ともこんなに長く話をしたことがなかった事に帰り際に気がついた。主殿の粘りには参った。

 この農場には来週再びお邪魔することになる。
住宅脇の納屋に4枚ドアの冷蔵庫と冷凍庫があってあまり冷えないので修繕がきくものかどうか一度調べてもらいたいのだそうだ。俺が駆け出しの頃に見かけた(ということは何と30年近くも前の)ラックランド製のものだ。気前はいいし金をすぐくれるところは貧乏人の俺としては大変有り難いが依頼の内容は困ったもんだ。
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くるみ

『良いお仕事』にも難点は付き物なんですね(^^; お金を積んでも治らない病気もあるし…。農家さんにしても どんなにお金を積まれても作付け面積の何倍もの野菜をくれ!とかいっぺんに一年分の牛乳を絞って出せ!…と言われても無理でしょうに( ̄▽ ̄)b 目先の利益だけじゃなく、後々を考えてのお仕事をする所がまさに職人さんで、尊敬いたしますm(__)m。
by くるみ (2012-06-07 14:00) 

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