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三洋電機製品の気になる点 [修理屋から見た厨房機材]

 今ではパナソニックに吸収された三洋電機だが,これまで外食の市場には一定のシェアを確保しており,先々の市場戦略はともかく,現在市場で稼働中の機器類について新体制の元でこの先どれくらい面倒を見てくれるのかについては未知数な部分もあると聞く。

 個人的には,ということは修理屋の立場から見て、と言い換えることも可能だが,三洋電機の製品と俺はあまり相性がよろしくない。汎用の冷凍機類については別の機会に書くとして,業務用の食品機器,厨房機材については,という限定枠でここでの話を進める。

 三洋の製品についてはっきりわかる特徴はビスやボルトにある。三洋の製品というのはとにかく滅多矢鱈にビスが多い。例えば製氷機,国内標準と言って良いホシザキの製品と三洋の製品とを見比べると歴然たる差がある。
 正確に時間を測って比較したことはないが,同じ修理作業をするにしても三洋の製品はホシザキ製に比べて格段に手間取る。例えばホシザキ製品であれば4本くらいのビスを外して辿り着けるパーツに三洋の製品は10本以上のビスが使われているといった具合だ。

 しかも近年特に感じられることだが,どう考えても三洋電機の製品には品質管理状の問題点と思われることがあり,ビスやボルトのトルク管理は明らかに杜撰であり,傾向としてはオーバートルクに偏向している。

(1)ビスの頭がなめている。
(2)塑性域(ねじれが戻らなく,かつ,破断しないでいる状態)まで締め込まれており,ビスを緩める際に頭がねじ切れる。
(3)ワークが樹脂製の場合,オーバートルクによりタップ(ネジ山)が潰れており締め付けが効いていない。或いはひびが入っている。

 三洋の冷機器類は冷蔵ショーケースやチェストフリーザーなど中国製のものも一定割合を占めているが上に書いたような状態はむしろ国内生産された機器類に多い。製造工程に於けるトルク管理なんていうのは生産管理のイロハだが、こんな事も満足に出来ていない。
 それらは無用な故障を招いたり,作業時間のずれ込みとなるわけで修理屋としては迷惑な話だ。

 電気系統について話題を変えると,三洋の製品の特徴はとにかく回路が入り組んでおり、配線がややこしい。
実体を目にして明らかなのはやけにリレーが多い。仮に冷蔵庫や製氷機として同等品を三社,三洋,ホシザキ,大和冷機と並べて比較してみると記述した順番に回路は簡素なものである。比較対象を大和の製品として回路図を見比べてみると,同じ機能をさせるためにどうしてこんなに違うのかと思えるほど配線図のややこしさが異なる。
 俺なりに無理矢理こじつけると三洋の製品はヨーロッパ風,大和はアメリカっぽく中間くらいにホシザキの製品がある。

 技術屋の端くれとして意地悪く三洋の製品の配線図を眺めていると,先に書いた配線のややこしさ,リレーの多さにある種の不自然さを感じることがある。結論から言うと無駄なリレーが多い。もっと具体的に言えばリレーを動かすためのリレーとかスイッチを動かすためのスイッチとかいった個所が三洋の製品には結構多く、これが回路をややこしくしている。
 正直なところそれは回路設計としては洗練されておらず,悪い見本みたいな制御系だと俺は思っている。実際,ある機種によっては配線を変更して幾つかのリレーを省略させながらも出荷時と同じ動作をさせることも可能な場合がある。俺のような田舎の修理屋がそういう拡大解釈も可能なくらい設計としては甘いと言うか緩い。

 本来であれば製造原価を切り詰めるために使用パーツというのは出来るだけ少なく,ということは電気回路としてはシンプルなものを心がけるのが回路設計の鉄則なはずだが三洋はそうではない、何故か?
 使用されているリレーのメーカーは、例えばオムロンだとか松下といった汎用品ではない事に俺はあるとき気づいた。ピンやソケットの互換性はあるがIDE(この辺記憶が曖昧)とかいったようなロゴマークのプリントされた黒いリレーがある時期から多用され始めるようになった。
 三洋の製品以外ではおよそ見かけることのないパーツメーカーだが,不確かな風聞によるとこれは三洋に関係した、半ば身内がかった中国のパーツメーカーであるとかないとか。
 だとすると無用にややこしい回路設計の原因には説明がつきそうだ。要するに,身内のパーツメーカーをどんどん引き立てて量産効果を出すためなのか,と俺は想像している。

 ついでに書くと,この中国製リレーは大変出来が悪く,一時期は故障原因のうち結構な割合を占めていた。ある業務用冷蔵庫があんまり良く壊れるので頭にきて松下のリレーに換装してみたところ故障がぴたっと治まったことが幾つかある。
 メーカーからすれば純正パーツを使わずに代用品で済ます行いは改造に類することであってけしからんのかもしれないが故障なんていうのは少ない方がいいに決まっているのだから文句を言われる筋合いはねえ,と,俺は図々しく構えている。

 不満を書き連ねたが美点がないこともない。
未整理で雑な造りの三洋製品だが金はかかっている。製氷機を例にとるとポンプやファンなどのモーター類はホシザキの製品に比べると格段に耐久性があり,俺としては交換歴が殆ど記憶に残っていないくらいだ。良くホシザキの製品は最初からプロユースを想定しており,対して三洋は基本的に家電メーカーなのだから造りも家電品並みでチャチだという風聞を耳にすることはあるが実は全く逆である。業務用冷蔵庫のメーカー中,唯一三洋だけが自前のコンプレッサーやらモーターを内製できる企業だということは重要だ。

 おおざっぱな対比として,スマートで合理的な造りだが線の細いホシザキに対して不器用で粗い造りだがはらわたには金がかかっている三洋電機,というのが修理屋である俺から見た印象である。
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くるみ

製品も会社も(人も)必ず一長一短はあるものですね! なぜか私は漠然と『わかめ』を思い出しました!? 塩蔵わかめと乾燥わかめ…前者は調理に辿り着くまでは塩抜き等の一手間があり 後者はお手軽です。でも味(中身)は抜群に塩蔵わかめの方が美味しいのです。 まさか自社に塩釜工場を保持、もしくは提携してはいないのでしょうが(>_<) すっとんきょうな変換の仕方ですみません(^^; きっと、製品を省略化するにも莫大な資金がいるのでしょうか?
by くるみ (2012-05-14 06:29) 

中古厨房買取

また失礼致します。
僕の経験ですが、サンヨー製のコールドテーブル等は
たまにIO基板が故障します。基板だけで¥8,000くらいするので、
基板上のリレー交換でなんとか済ませていまが。
それに、Tuffleさんの言うとおり、サンヨー製の製氷機のポンプ、ファンモーターは交換した覚えがないです。
ですが、水皿の作りが悪いのか、水皿の材料が悪いのか、水皿は良く割れますね。
ホシザキ製の製氷機は、ポンプは確かに悪くなりやすいですね・・
前に比べると大分良くなったという話ですが・・・

by 中古厨房買取 (2012-05-18 12:55) 

しげ

サンヨーも今は会社がなくなってしまいましたが、
末期の頃のサンヨー経営者が中国と関係が深く、半ば会社経営が私物化されたような状態で、事業が傾いた一因となったと漏れ聞きましたが、実際の製品にもそういう事情の一端が現れていたのですね。

家電製品でもサンヨー製品は値段の割に堅実に作られ、丈夫で長持ちすると定評がありましたが、安売り目玉商品の常連になってしまっていき、年々、事業環境が厳しくなる中で、この記事で指摘されているように原価低減意識に甘いモノづくりや、公私混同の不合理な経営を許していたのでは、事業継続が難しくなったのもむべなるかな、とすべきなのかもしれませんね。
by しげ (2016-08-08 14:08) 

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