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ラチェット式のビットドライバーRDS32 [便利そうな商売道具]

 寄る年波とはこういうことで,ここ数年で道具袋の重量が段々負担に思えてきた。

 先日,某病院で修理作業の際に立ち会った施設課長殿は何気に俺のツールバッグを持ち,最初にあんたと会った頃は確かこれくらいの目方の道具箱を軽々とぶら下げて来ていたよなあ,今じゃあショルダーベルトのご厄介か,馬力が落ちたよな,お互いに,と苦笑いした。
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いかにも俺は坂道を転げ落ちるようにしてパワーダウンの進行中だ。
それで昨年来,ガタの来始めたこの身体を道具で助けられはしないかと,ああでもないこうでもない唸りながら携行する道具を見直している最中なのだが。

 何と言っても昨年痛めた手首のダメージが大きい。両手首の腱鞘炎は持病だが今回ばかりはかなり無茶をしたせいもあって右手首の違和感が取りきれない。何をやってもさっぱり効果がない。
 ガチガチに締まったビスを緩める際に「パキーン」と音を立てて緩む瞬間が一番怖い。きっとそのとき手首には物凄い負担がかかっているはずではなかろうか。

 ついでに思い直してみると,ここ数年は扱うビスの種類が増えて来てこれまた頭痛の種だ。ビスの種類が増えるということは用意するドライバーの種類も増えるわけで,結果として道具箱は重くなり,俺は更にくたびれる。
 昨年買い込んだFACOMのツールセットR2nanoは結構重宝していて,各種ビットを付け替えての作業は結構効率が良い。
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 手にするまではビットのつけかえ式なんてどうせあちこちガタついてロクなものじゃないだろうとタカをくくっていたが案外馬鹿にならない。R2nanoとプライヤー類だけで作業が終わってしまう場合も珍しくない。
 R2nanoの惜しいと思える点はドライバーハンドルが小さいことで,セットの内容を考えれば仕方がないと割り切るしかない。それに国内製のソケットレンチセットについてくるドライバーハンドルに比べればずっとに握り易く力も入れ易いのでこれはこれで良しとしなければならない。

 別の機会に書こうと思うがある時,ドイツ製Weraのプラスビットを遊び半分で取付けてみたときにその喰いつきの良さに仰天した。
 シャンクの部分にガタがあるため使用感が今一という宿命的な欠点はあるが,先端が減ってきてもビットを交換するだけで新品同様というのは経済的で大変有り難い。自分に合いそうなビットをあれこれ試してみるにしても何百円かの出費で済むところも貧乏人向けのツールではある。
 
 どうせビット交換式にするのならいっそのことラチェットドライバーはどうかと思いついた。手首に爆弾を抱えた俺のような身の上にとっては助かる機能かもしれない。この仕事を始めてこのかた30年近く,俺はこの形式をどこかで内心小馬鹿にしていたところがある。ホームセンターみたいなところで陳列されている幾つかの品物を触りに行くと,機能上仕方がないのだろうがどれもグリップがでかくて重い。
 やっぱりロクなものはないわ,と,諦めがついてから幾らも経たないうちに普段出入りする機械材料問屋のフロントにちょっと目を引くケースがあった。

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 昨年11月の末頃に発売されたトネ(前田金属工業)の新製品だと言う。45ギヤのラチェットドライバーでさすがにTONEが作るとホームセンターで売っている聞いたこともないようなメーカーの粗悪品とは大違いの質感である。
 シャンクが固定式のドライバーは昨年PBの製品に入れ替えてみて好印象を持っているのでビットドライバーもと考えていたが如何せん値段が高いしギヤの山数が24山で粗い。ここだけ見るとそれこそホームセンターで投げ売りしている安物と変わらないスペックだ。どうしたものかと思案していたところにこの出会いだ。

 問屋のフロントでRDS32の現物をしげしげと眺めていると専務さんがニコニコしながら近寄って来た。このセットは今年始めからずっとディスプレイされているのだが一向に売れた形跡がない。きっと俺と同じようにビット交換式だとかラチェット機能付きのドライバーを敬遠する人が多いからなのではないか。
 専務さんは俺の物欲を透視する能力があるようだ。
ケースの蓋を閉じて紙箱に納めると俺の方に突き出して寄越す。いやいやいやいやちょっと待て,俺は先月買ったメタルソーの買い掛けがまだそっくり残っているので今はこういう買い物をするわけにはいかんのだと自分を制した。

http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2012-02-02

 「いいからいいから持ってきなって。支払いは待つからさ。どうせそのうち買うんだって顔に書いてあるよ」という殺し文句に俺は簡単に転がった。
 ねぐらに持ち帰ってケースを開け、現物を取り出してあれこれ弄りまくる。以下、第一印象を断片的に列記する。
グリップは全体に大づくりで、俺の手のひらのサイズだとギリギリ許容値の印象だ。これ以上太いと力の入り具合が今一だろうと思う。
断面形状はシャンク近くで真円、グリップエンドに近づくに従って楕円というよりも長円に変形していく。この長円形という断面形状がかなり太いグリップでも力が入りやすい理由だろう。
ラチェットギヤを組み込むと宿命的に重量も増大する。このドライバーも結構重いが重量バランスが良く長時間使用による疲労はすくなさそうだ。

 売り物はロックボタン操作によってグリップ形状がストレートタイプとピストルグリップに切り替えられる機構だが、ホームセンターで投げ売りされる安物とは大違いで剛性、精度ともにかなりのものでガタの出方が全然別物だ。
 俺がこのドライバーに目を付けたのもこの機能であって、手首に爆弾を抱える身の上としては緩める動作の時にピストルグリップとして使用すれば高トルクを楽にかけられて助かるのではないかという目算を立てているわけだ。
 また、俺は早回しの時についついシャンク握って回す癖があるので、このセットについているローレットを刻んだ太めのシャンクは相性が良さそうだ。この辺の使用感は実戦使用してみないと断定できないところもある。

 もう一つのグリップであるスタビードライバーだが握った感触はこれまで使ってみたスタビードライバーの全てを通じて最高のものだ。短いために力がかけにくく高トルク作業には本来的に不向きだがこれまた太めのグリップなので握力が伝わりやすい。
 但し、こちらも全体に大づくりなのでビットを取り付けた時の全体長は固定シャンク50mmのスタビードライバーよりも少し長くなるが実用上明らかな不具合が生じるほどの差ではない。

 ビットの固定方法はどちらもマグネットであり、ライトで中を照らしてみる限りネオジウム磁石のようで吸着力は物凄い。強力すぎてホルダーに一旦差し込んだビットを抜き出す時には指が痛くなるくらいだ。
 このため、差し替え式のシャンクにはホルダー後部にビットを外すためのプッシュピンがついている。スタビードライバーにはこの機能がないのでビット交換時にはプライヤーなどで毎度引っこ抜く作業がついて回るかもしれない。

 グリップの仕上げや回転方向の切り替えダイヤルなど細部を見ているとFACOMのラチェットドライバーに類似した考え方が随所に見受けられる。グリップ後端に予備のビットを収納しておく脱着式のホルダーを組み込む構造も似ている。

 絶縁工具やファストアクションレンチなど、TONEはFACOMの製品を自社のカタログに堂々と掲載しているくらいだから企業同士で何かしらの協力関係があるのかもしれない。
 同じ自動車工具でもKTCにくらべてTONEは質実剛健風というか悪く言えば少々野暮ったい印象がこれまで俺にはどうしてもあった。偏見なのだろうがKTCといえば乗用車をイメージするのだがTONEというのはトラックだとかブルドーザーやショベルカーみたいな重機類を連想しがちだ。
 そういうメーカーがFACOMとの提携関係でもあってのことなのだろうがここしばらくリリースされる製品はだんだん洗練された造りに変化しつつあるように見える。 
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くるみ

HarryTuttleさん、ここ最近は良いお買い物をしている様に記憶しております(^u^) お道具には長所と短所が必ずありますね。ベストの物を手に入れても、もっと機能の良い物もすぐでますよね!?携帯電話ほどではないとは思いますが(^_^;) 『爆弾』の為には、なるべく軽い物が良いですね?

by くるみ (2012-03-28 22:43) 

HarryTuttle

くるみ様,コメント有り難うございます。
今回の買い物については『買わされた』風の成り行きではあるのです。
あまり大きな必然性はなく,ないよりはあった方がいいかもしれないとか,いずれ役に立つ場面があるかもしれないとかいった程度の購入動機です。
 昨年来,少々道具オタク風になっているところもあり,道具に見合っただけの仕事ができているのかと自問するようになっています。
by HarryTuttle (2012-03-29 09:34) 

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