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ジャンパー線三連発 [日記、雑感]

 本日は2011年10月9日,日曜日である。
 本当は,俺は半期に一度の釣り大会に参加するために山奥の渓流に分け入っているはずの日だ。
しかしここ数日,風邪をひいて調子が悪いので泣く泣く参加を断り,寝床にもぐって悶々としていたのだった。

 先月初めあたりからそういうのが多そうに思えるのだが,調子が悪くて昼日中から寝床に潜っていると家にトラックが突っ込んできたりとか取引先が破産しただとか必ずロクでもないことが起きる。
 
 今日も例外ではない。
咳き込んでゲホゲホやっていると枕元で携帯電話が鳴った。得意先の某国立病院からで温冷配膳車のヒーターが効かないので何とか今日対応してくれと言う。
 某国立病院には因縁がある。
http://tuttle.blog.so-net.ne.jp/2010-12-29

 俺は執念深い性質の持ち主だからこういう事はいつまでもネチネチと根に持つ事にしているのだ。
風邪をひいているのでうつすと申し訳ないとか休業日の仕事は割り増しが発生するぞだとか脅したりすかしたりしたが食い下がり方が半端ない。挙げ句の果てには事務方が電話を寄越してきて具合が悪くなったら救急外来で処置してもらうから何とか頼むとまで来たもんだ。
 
 逆らえない得意先であるのははなっから分かっているがなんだか一矢報いた気はしたので俺は渋々,ブツブツ言いながら某国立病院に向かって車を転がした。
 運転途中に携帯電話が鳴って道ばたに車を停めて電話を取ると隣町の某町立病院からだった。冷蔵庫が冷えなくなり,食材をしまう場所がないので何とか今日中に対応してくれないかとの事だった。『今日は休みなんだから勘弁して欲しいよなあ』とウンザリ来るが某町立病院の栄養士は俺の天敵である某総合病院の栄養科長殿と大変親しい間柄なのでこれまた渋々引き受ける事にした。女の口は怖い。

(一発目)松下電工製 温冷配膳車デリカート

庫内ヒーターをスイッチングさせるための電磁接触器の接点が焼損しておる。
ヒーターはパネル一枚あたり3本がパラレルで繋がっており、接触器側から見て単相負荷として運転される。開閉接点は2回路動作の両切りで,このうちの一回路が焼損しているというわけだ。

 『これは何とか仮処置ができそうだな・・・』俺は道具鞄から電線の切れっぱしを取出してジャンパー線をこしらえながら考えた。
 電磁接触器の接点一回路分にジャンパー線を挿入し,ヒーターの開閉を一回路の片切り動作で当面はしのぐ。温調機能動作の試運転は上首尾でひとまず俺は安心して某国立病院を出た。

(二発目) 北沢産業(今は亡きレイキ工業OEM) 冷蔵庫  KIB-415(だったか?)

 霜取りが効いておらず,冷却器は凍り付きを起こしていた。配線図を調べてみると霜取りヒーターは霜取り終了と過昇防止のシリーズに接続されたバイメタルサーモ二個でon/offする事になっている。実機の線を切り離して調べてみると霜取り終了サーモが働いておらず,ヒーターが働かないための凍り付き発生と判断できた。

 『これは何とか仮処置ができそうだな・・・』俺は道具鞄から電線の切れっぱしを取出してジャンパー線をこしらえながら考えた。 

霜取り終了用のバイメタルサーモをパスするため、サーモ接点とパラレルにジャンパー線を挿入する。霜取りヒーターは感知温度60℃の過昇防止サーモのみで開閉動作する事になり,霜取り中は入りっ放しになるので庫内温度はやや上がるが品温に影響はない。

 霜取り試運転は結構上首尾で,当初予想していたほどには庫内温度は上がらずに済みそうだった。
連休明けは結構忙しいな,と,考えながら冷蔵庫の温度計を眺めていると携帯が鳴った。
 
 俺があんちゃんの頃から目をかけてもらい,随分お客さんをご紹介して頂いてご厄介になった某中国料理店の親方からだ。これまた何とも断りづらい得意先だ。昨日の夜から冷凍庫が冷えないので何とかしてくれと仰る。義理は立てなければならんので咳はひどくなるわ汗だくにはなるわだがやせ我慢をして合点承知の助。このようにして俺の静養すべき休日はどんどん削られていくのだ。

(三発目) 三洋電機製 冷凍庫 SRF-F1283SA
 冷媒管を見ると低圧配管はコンプレッサーの入り口にまで奇麗に霜がついており,冷媒管系統の異常ではない事に俺はとりあえず安心した。
 庫内を覗いてみると冷却用のファンモーターが回っていない。冷気の循環が行われないために冷えないというのが所見である。
 
 ある時期からの三洋電機の冷蔵庫は制御用の基盤にオンボードで乗っかっているマイクロリレーによってスイッチングされる理屈である。そしてこの頃の製品には実はロットによっては制御用の基盤の出来が悪く誤動作を起こすものがある。
 電気のボックスをバラして回路図を睨みつけ,庫内ファンモーター出力端子の電圧を測ってみると案の定ゼロである。基盤が絡んでいるとなるとあまり好き放題の事もできない。さて,どうする?

 『これは何とか仮処置ができそうだな・・・』俺は道具鞄から電線の切れっぱしを取出してジャンパー線をこしらえながら考えた。
  俺は庫内ファンモーター二個分のリード線を途中で切ってジャンパー線に繋いだ。ジャンパー線の片側はコンプレッサーのon/offのための開閉器一次側に繋ぐ。つまり,冷却中だろうが霜取り中だろうが関係なしに庫内ファンは回りっ放しである。霜取り時の庫内温度はやや上がるが品温への影響は無視できる程度のものでしかない。冷えないよりはマシだろう。

 こんな風にして俺は,本日日曜日のイレギュラーな修理3件を片付けた。考えてみると3件とも『ジャンパー線で何かをショートカットする』事ばっかりだ。こういう事は日頃余りない。

 後の事は連休が明けてからゆっくり取りかかる事にする。本日は応急処置の成功率が100%で俺はなかなか悪くない気分であるが3件目を片付けてからどっと疲れが出てきたので家に戻って再び寝床に潜る事にした。
 記憶があやふやにならないうちに,こうして休日に出動した分は請求額に上乗せしておかなければなかなか儲からないのだぞ,と,自分に言い聞かせながら俺は寝る。言い聞かせた事はどうせすぐに忘れて俺は間違った請求書を書き,貧乏暮らしは続く。
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くるみ

釣りは残念でしたね。でも他で『魚』を釣ったのだから請求は確実に(^-^)bチャチャッと直してしまうなんて凄いです!!つくづく思いますがメーカーの方は同じ機種だけ勉強すれば良いけど 厨房のお医者さんは色んな機種に明るくなければならなく改めて尊敬いたしますm(__)m 余談ですが文章の構成がとても面白かったです(^o^ゞ(笑) 体調の回復をお祈りいたします。
by くるみ (2011-10-10 10:21) 

HarryTuttle

くるみ様 いつもコメント有り難うございます。
普段,日曜日や祝日の修理というのは大体当日の仮処置もNGで、『これは今日のものにはなりませんなあ』と翌日以降に持ち越しの展開が多いのですがこの日は珍しく,3件とも何とかなりました。

 私も以前はその立場でしたが,メーカーに在籍するサービスマンの行う修理というのは『工場出荷の状態に復元する』事なのです。製造元としての立場上,そこから外れて何でもありでとにかく結果の帳尻を合わせるのはPL法という制度も現在はあるのでやっていい事には制約が生まれます。
 言い換えれば,その辺の隙間が私のような野良犬野郎の食い扶持が生まれる餌場でもあるわけです。但しこういう裏技を駆使しての稼働は持ち主である得意先の責任の元に行う事にしています。
 私は水と責任は被りたくないので。
by HarryTuttle (2011-10-11 11:15) 

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