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Vintage Dishwasher [修理屋から見た厨房機材]

 アジア市場向けの一部手抜き製品は考えから外すとして,きちんとNSFの認証を取得したホバートの食器洗浄機が売る側からすると痛し痒しの存在なのは間違いない。

 現地法人の社員はしばしば嘆くが,何せやたらと長持ちする。リプレースなんて死語だ。一度納めたらもう、いつまでたっても次なんて売れないのだ。

 得意先である某焼肉店にはAM-14というボックスタイプの食器洗浄機がある。
hobart-am-14.gif


 俺が会社員だった頃に納めさせて頂いたもので今から大体20年近く前の事だ。とにかく壊れない。今までの間に発生した呼称など全部そらで言える程度でしかない。
(1)稼働後8年目に本体タンクヒーターのリード線が断線したので交換(ヒーターは大丈夫でした)
(2)稼働後10年目にすすぎ配管のバキュームブレーカーが壊れたので交換
(3)稼働後15年目にドアスプリングが外れて落っこちたので取付け直し
20年近くも動いていて起こった故障がこれだけなのだから次が売れないどころか修理で稼ぐ事も期待できない。本当に,一度納まったらそれっきりというのがホバートの製品である。

 それであるとき,Youtubeの動画をあれこれほじくり返していたら妙なものを見つけた。世界は広いと言うか,上には上があるものだ。稼働歴20年どころか40年というのだからぶったまげる。
URL:http://youtu.be/9mFGwZCaSjE


 型式名はAM-9という。ホバートのボックスタイプ洗浄機の型番末尾の数字はまちまちで必ずしも一つずつ年を取っていくわけではない。現行機種はAM-15でその前がAM-14,その前はAM-12といった具合である。俺がいじくった事のある機種はAM-12が最も古くそれ以前の機種は見た事がない。
 1971年から使い続けているというのだからもう40年にもなる。細部を見ていくと洗浄ノズルアームがステンレスのプレスではなく何と鋳物であるとか洗浄ポンプのマウントの仕方がラックコンベアータイプのCラインと同じだったりとかで、修理屋としては色々な意味で興味深い。
また,洗浄ポンプはケーシングのフランジ部分からシール剤がはみ出しているのが確認できるのでこれまでの間にメカニカルシールの交換歴はありそうだ。まあ40年も使っていればメカシールだって何度かはいかれるだろう。

 以前IHIの社員と雑談したときに,製品開発にあたってホバートの製品をお手本にしたと伺った事がある。コンベアータイプに関しては確かにそうだな,と思えたがボックスタイプについてはうまく連想が働かなかった。しかし今回こうしてAM-9の動画を見つけてこれがJWD-6のお手本だったのだと理解できた。
3643916.jpg
 単なる厨房屋であればてきとうに汎用品のポンプを取付けておしまいのところだが,さすがにIHIはマウントしたままでもケーシングを分解してメンテナンスできるようなポンプであることに強いこだわりを見せてわざわざ西島製作所にホバートの内製品に大変似通った構造を持つ(実はもっとごつい)特注品を発注していたのである。

 こちらも稼働25年くらいはザラで一度納めたらそれっきりの代表選手みたいな機種だがさすがに40年動いたという話はまだ聞いていない。いずれにしても機械よりも先に建物の方が参ってしまうんじゃないのかとか,縁起でもない話だが納めた営業担当の方が先に死んでしまうんじゃないのかとかいったクオリティである。

 そしてここが大事なところだが,そういう機械は日本では絶対に売れない。
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くるみ

そんな素晴らしい機械が日本で売れないのはやはりお値段ですか?もっとも普及しちゃうとお仕事が減っちゃいますか(^_^;)
by くるみ (2011-10-10 09:17) 

HarryTuttle

くるみ様,いつもコメント有り難うございます。
値段,というのは確かにあると思いますがそれ以上に売り方が問題だと私は見ています。
今では食器洗浄機から手を引いてしまった石川島もそうですが,『売ってやる』と言わんばかりに鼻っ柱が強いです。

 業務用厨房機材の販売姿勢は良くも悪くもホシザキ風がこの国での標準なのでしょう。用もないのに毎日押し掛けてきては頭を下げまくり,他社との競合となれば際限なく安い見積りを書きまくり,とにかく契約書にはんこをついてもらうまでは遮二無二拝み倒す。
 そういう振る舞いの営業からでないと購入の決断ができないバイヤーが物凄く多そうに思っています。

 
by HarryTuttle (2011-10-10 22:34) 

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