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松下電工製デリカートのインチキ修理記録を公開 [含蓄まがいの無用な知識]

 前回のテキストにあった松下電工製の温冷配膳車デリカートの修理記録を残しておきます。
 
 今はもうなくなってしまったが,病院給食には特別管理加算というのがあって,午後6時半以降に温度65℃以上で配食を行っている場合は診療報酬対象となっていた。
 配食形態には三つあり,(1)保温食器を使用する(2)病棟に食堂を設け各病棟ごとに二次加熱調理を行う(3)保温保冷機能を持つ配膳車を使用する,というものだ。
 導入された形態は俺の携わった限りでは全て(1)か(3)のいずれかで、民間病院で職員が給食業務を行っているようなところではイニシャルコストを抑える意味で(1)が多かった。

 今回の修理対象はこれ
0709-11a.jpg

 依頼内容は三つある温蔵室のうちの一つが昇温の立ち上がりが良くないので調べて頂きたいとのことだった。
 前に書いたように俺は製造元の松下電工からは閉め出しを喰っているインチキ業者なので解決能力がない旨を伝えて依頼を断ったが先方病院の事務方は松下の修理代が高いので何とか頼むと食い下がる。

 しゃあないなあ、とか何とかぶつくさ言いながら問題の個体を調べてみると断線したヒーターがあることが判明した。デリカートの温蔵パネルは以下の通りの構成である。

1:電源は3φ200Vで、三室ある温蔵庫の各室のパネル合計3枚が三相負荷を形成している。 2:温蔵パネル一枚はコードヒーター三本がパラレルで結線されている。 3:温蔵パネル一枚は自動復帰式のバイメタルサーモで過昇御保護されている。 4:各パネルを構成するヒーター三本のうち一本には温度ヒューズが挿入されていて残り2本は開閉器二次側に直結されている。 4の補足:温度ヒューズはアルミテープによりパネルに貼付けられており,露出していない。
 
 三本並列接続されているヒーターのうちの一本が断線しているので発熱量が約60%に低下しておりその分立ち上がりに時間がかかっているのが事象である。
 今回の状況でのポイントは製造元の松下電工がどういう単位でパーツを供出してくれるのかというところにある。断線箇所に相当するヒーター一本(一枚)だけなのか、それとも温蔵パネル一枚単位なのか。パーツ価格は天と地ほども違うのはやる前から分かりきっているのだが。

 不良業者の俺が松下に門前払いを喰わされるのは明白なので,病院の技官が下調べをした上での問い合わせということにしてもらったところ,予想通り松下からの対応はヒーター一本単位での供出はできません。温蔵パネル一枚が最小単位ですとの回答だった。パーツ単価はおよそ七万円かそこららしい。
 
 某病院はベッド数が400を超える結構大規模な施設で,勿論温冷配膳車は何台も運用している。温蔵パネル一枚の交換費用は作業可能な時間帯が夜に限定されていることも相まって恐らく十万円近くになり得る。配膳車の合計台数から数えると使用されている温蔵パネルは数十枚に及ぶ。この先,立ち上がりの不良箇所が一カ所発生するたんびにそんな金額を請求されるのか、とてもじゃないがやってられない,と,事務方は脳天からキノコ雲を上げた。

 そんなわけで、故障診断だけを済ませ点検料何千円かを請求してとっととずらかるつもりでいたこの俺は何とかもっと安い解決策を見つけてくれと事務方に泣きつかれた次第。
 前にも書いたように現場レベルでは頭に来ることの多い得意先だが俺は潤沢に顧客を抱えている身の上ではないしこれまで20数年お世話になり続けてきた得意先でもあるので無下に断るわけにも行かず,宛もないのに安請け合いした。
 俺の元の勤務先も温冷配膳車は製造しているので,工場に問い合わせてみたがやはりパネル単位での頒布しかできないと言う。OBであるのをいいことにこれまで散々無理難題を聞き入れてもらってきたが物事には限度があるらしい。配膳車の製造元はどこもヒーターは専業メーカーに特注していて製造計画に合わせてロット単位での発注になるので端数を出せないとのことだ。
 ついでに言えば仮にヒーター一本だけの交換作業を行った場合,作業者によっては後々ショートや漏電などの障害が起こり得るリスクがあるため供出はパネル単位にならざるを得ないとのことで俺は(俺を誰だと思ってるか!)と内心唸りながら仕方なく引いた。

 あらためて某病院の温冷配膳車全数を調べてみると,他にヒーターの断線している個体が2台あった。配膳車の台数にして三台,合計三本のヒーターが断線していることが判明した。(調べる時間も結構喰ったんだがな)

 そこで俺の,この出来の悪い頭にもちょっとしたプランが閃いた。
先に書いたように,一枚の温蔵パネルには3本のヒーターが貼付けられている。
七万円なりの温蔵パネルは頭に来るが一枚だけ買い、貼付けられている三本のヒーターをはぎ取ってそれぞれ一カ所断線箇所のある三台分の配膳車の修理にあてがってはどうか。病院は支出するパーツ代を1/3に抑えられるし俺は三台分の修理でまとまった修理代を稼げる。これはいいわいと俺はほくそ笑んで腹の中で松下にアッカンベーをしてやったのだ,皆様。

 はたして俺のこの,せこい作戦は事務方に諸手を上げて迎えられた。後は実行あるのみ,だ。
テキストが長くなりすぎそうなので本日はここまで。(以下続く)
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