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配線図なしはキツい [お仕事上のぼやき]

 俺自身の間抜けさ加減を晒す事も兼ねて包丁まな板殺菌庫の修理の事を書いておく。
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 (写真は記事とは無関係です)

最初に依頼を受けたときの内容は殺菌灯(紫外線ランプ)を交換したのに点灯しないというものだった。グローランプは交換したのかと聞くと明確な返答はなかったが蛍光管の交換の際にはグローランプも一緒に行うのがお約束なのでこれは聞くまでもなかったかと俺は独り合点したのだった(後からこれが大失敗だったとわかる)。

 現場に着いて実機を見てみると三本ある殺菌灯は一つも点灯していない。殺菌灯は並列動作なので何か大本の問題と推測できた。
 使用者の目を痛めないようにと,包丁まな板殺菌庫の殺菌灯はドアスイッチと連動している。真っ先に,取っ付きの良さそうな場所だったのでこれを調べてみたが問題はない。

 大体,包丁まな板殺菌庫などというのはヒーターとファンモーターと殺菌灯がくっついているだけの単純至極な機材だと,俺は高をくくっている。
 高をくくった状態で物事を見ているととんでもない目に遭う事はよくある。この日もそうだった。ドアスイッチが問題ない時点で本気モードに頭を切り替えておくべきだった。今から言っても仕方のない事なのだが。
 タイマーだの何だのとくっついているパーツを場当たり的にあれこれ調べたが特に問題がない。気づいてみると既に一時間以上が経過している。殺菌庫程度にこんなに手間取っているようでは俺もいい加減ヤキが回っているな,と,自嘲的な気分になった。
 当たり前の話だが,電気系の修理を行う場合には必ず手元に配線図があり,これを見ながらというのがお約束であってヤマ勘で行うのは構造が完全に頭に入ってるか,あるいは全く単純至極である場合かのどちらかであっていずれにせよ例外だ。ここでの俺は後者の思い込みでやっていたのだが思いっきり外した。

 やはり配線図がなければ不具合箇所が探せない,と観念したときには既に訪問してから一時間半が経過していた。まるっきりの独り相撲である。
 ところが機体のどこを探しても配線図は見当たらない。考えてみるとどこのメーカーの殺菌庫にも配線図は添付されていない。負け惜しみで言うわけではないが不親切な話だ。
 ばつが悪いが一旦場を外して資料をコピーするために車を転がした。
あらためて配線図を眺めてみると特段難解な回路でもない(当然だ)。さしあたり殺菌灯を点灯させるためには一つリレー接点をジャンプさせれば済む事がわかった。

 それで修理の現場へと取って返し,配線を変更してみたが相変わらず殺菌灯はうんともすんとも言わないので俺は大いに動揺したのだった。
 再び混迷状態であれこれ配線を辿ってみると殺菌の前行程である乾燥機能が働かない事が判明した。不審に思ってあちこち調べていると筐体の下部分に6Pのナイロンプラグが露出状態で取り付けられており,配線が腐食して2本断線しているのが発見された。
 断線した配線は芯線部分が露出した状態で床に触りそうな高さで垂れ下がっていた。乾燥機能が働かないのはこの部分の断線のせいである事はすぐに想像がついたがそれにしてもよく今迄漏電事故が起きずにいたものだと変に感心した。
 大体業務用の厨房機材というのは水がかかる事を前提として実装を考えるのが本筋であって殊更防沫処理がなされてもいない電気接続箇所が底面とは言え外部に露出しているとは全く身の毛もよだつような造りだが、まあ厨房屋の作る製品などおしなべてこの程度のものだ。

 乾燥機能の断線障害を復旧させた時点で俺は相当だれ気味になっていた事をここで白状しておく。何事によらず薮蛇みたいな障害や道草はやる気を失わせるものだ。
 それで,改めて試運転に取りかかるとやっぱり殺菌灯は点灯しないので俺は本当に困り果てた。すべき事はやり尽くしたはずなのにと困惑したのだよ。
 辺りを見ると既に夕食の配膳が始まろうとしている。ここで3時間近くが経過しているわけだ。俺は俺自身に落胆した。ここ迄無能な修理屋だとは我ながら情けない。

 不意に俺はグローランプを交換する事を思いついた。消去法で考えてみればもうそれくらいしか残っていないのだ。
 最初の電話のやり取りをなるべく克明に思い出そうとした。グローランプの交換は済んでいると俺は思い込んでいたが電話をかけてきた調理員はそれを明言したわけではなかったはずなのだ。
 疑い半分でグローランプを三カ所取り外してみるとどれも古く,交換された形跡がない。時計を見るとあと5分で病院職員の退勤時間である。俺は慌てて電気室に駆け込んで同形のグローランプを3個頂いてきて取り付けてみた。時間ギリギリ,滑り込みだ。

 果たして殺菌灯はというと,呆気ないくらい即座に点灯したので俺は安心しながら拍子抜けすると同時に自分の迂闊さに腹が立った。
 最初に電話を受けた時点でここをしつこく確認していればもっとさっさと事は片付いたはずなのだ。一体何をやっているのか。絵に描いたような独り相撲だったのだ。バカとしか言いようがない。

 しかし悪い事ばかりだったわけでもない。得意先は殺菌庫の乾燥機能がアウトである事も配線が断線して場合によっては感電事故が起こりそうだった事も知らずに使い続けてきたわけで,ここを発見する事でそれなりの金額の修理代金請求を俺は行えるわけだ。
 独り相撲は馬鹿げていたがカネに反映させる事のできるお仕事だったので40点くらいの出来ではあるがしかし,配線図もなしにヤマ勘で調べるのは無謀だという教訓を改めて思い知った。
 作業後,栄養士からは随分時間がかかった事を指摘されたが断線の件を説明する事で何とかご納得は頂けた。「感電事故」という言葉には絶大な説得力がある。修理屋にとっては殺し文句と言っても良さそうだ。
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