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自己嫌悪に陥りながらも八つ当たり [お仕事上のぼやき]

 生きる気力が萎えながらもダラダラと毎日を過ごしているわけだが,生きている以上は金が必要なので身体を動かして稼がなければならない。

 平野製作所という会社がある。小型の切載器具が中心のメーカーだ。実に色々な製品を製造しているので関心のある方はこちら。
http://www.hiranojp.com/

 よくもまあこれだけ色々思いつくものだと変に感心するが、こういった機会と言うよりは道具とでも言った方がふさわしそうな物体にはしばしば落とし穴があったりもする。
 卵カッターなる機材がある。厚焼き卵を寿司のタネに乗っかっている玉(ぎょく)にする道具だ。回転寿しだのスーパーの惣菜だのですし自体はもはや高級な料理でも何でもなくなってしまった。従って舞台裏では特に熟練の職人さんが手練で卵を切っているわけではなくこういう道具でいっぺんに20枚近いタネをエイヤッと切り出しているわけだ。
50.jpg
http://www.hiranojp.com/a/a1019.htm

 どんな道具だろうが使っていればいつかの時点で必ず壊れるのは自明として,たまごカッターには剃刀の刃のようなものがゾロゾロと十数枚並んでいる。折れたり刃こぼれしたものが目立つようになってきたので交換修理の依頼が来た。
 何事もそうだがなめてかかるととんでもない事になる。『チンケな道具だぜ,ヘッ』とタカをくくっていた俺は思いっきりはまった。
 一件単純な構造に見えるが分解してみるとやたらとビスが多い。パーツ同士は知恵の輪のように噛み合っていて一本道の分解手順を外すとお手上げだ。どうにかこうにか刃の交換を終えて組み立てて見ると刃の上下が逆になっているのが何枚かあった。弁解みたいだが一見,上下の区別がつきにくいのだ。一体何を間抜けな事をやっているのかと自分を罵倒しつつ組み立てのやり直しとなった。
 
 もう一回組み立て直してみると今度は刃がスリットにぶつかってハンドルが途中で引っかかる。刃物の組み立てフレームをよくよく見ると俺以前に修理したらしい跡がある。刃のピッチ(間隔)を決めているブッシュやらワッシャーの入り方がバラバラで交換していない刃は斜めに取り付けられていたり厚みがまちまちだったりした。
 頭に血が上るのがはっきりわかった。今度は俺のせいではないぞ,と内心いきり立つが一旦取りかかった以上は途中で放り出すわけにも行かない。何しろ始めていじる機材なので手探り作業となって余計時間がかかる。終わってみるとなんと4時間も格闘していた事を知った。

 無益な独り相撲に俺は心底落胆したのだ。俺もそろそろヤキが回ってきたのだろうかとがっかりした。出来高を考えると今回の俺の時間単価は恐らく二千円前後だろう。通常単価の1/3程度であって全く惨めなものだがモタモタしたのは自分の技量のせいなのだから仕方がない。
 初物というのは手間取る事が多いのは経験上仕方がないと割り切るとして、たまごカッターなどそんなにたくさん市場に出回っているわけではないので今回の経験が生かされる事はこの先殆どない。きっと次回,たまごカッターを修理する時には今回試行錯誤して覚えた事などきれいさっぱり忘れてまたモタモタするのだろう。不毛な家業だと思わず慨嘆したくなると同時にもっとわかりやすい製品を作ってくれ!と,製造元に八つ当たりしたくもなるのですよ。

 自社製品の対症療法を丸暗記して毎日同じ事を繰り返すだけのメーカーザービスがこういう場面では羨ましくなる。
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