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ラーメン店の凋落(1) [グルメ気取りのバカを晒す]

 ラーメン店が曲がり角である。特に多店舗チェーン店が厳しそうだ。これは地域性も絡む話なので必ずしも全国一律に敷衍された現象とは言えないかもしれないが私は私の知り得る範囲で起こっていることしか書けないので該当しない地域もあることはご了解願いたい。

 曲がり角である、と最初に書いてしまったが、元々あるべき規模に収斂しつつあると言ったほうが巨視的な視点からは正しいのかもしれない。必要以上に大きくなりすぎたと考えたほうが正しそうだ。そして、この商売をそれなりに続けてきた者としては現在のラーメン店経営の問題点やどういう連中がこの業種をダメにしてしまったのかが実によくわかるのだ。

 結論を先に書いてしまおう。ラーメン店をダメにした連中とは以下の3種類に大別される。
(1)所謂マスコミ
(2)食通気取りのバカども
(3)定見のない厨房屋

 まず、現在のラーメン店が営業に苦戦する理由を検証してみたい。理由ははっきりしていて過剰な設備投資だ。投下資本の回収に時間がかかりすぎる。
 そもそも、過去をうんと遡れば飲食店としてのラーメン店は最も手軽に始められる業態だった。豪華な内装工事はなく、複雑な調理施設も持たず、高価な食器も要らないのがラーメン店であって、寿司店と並んで厨房設備設計の入門編でもあった。私はそうだったが図面書きとして駆け出しの頃はラーメンや立ち食いそばは確かに手がけた。

 厨房設備設計プランとしては100万円あれば始められるのがラーメン店だったのだ。家庭用の冷凍冷蔵庫が一台、スープ用の骨を入れるフリーザー一台、4つくらいの鋳物コンロ、2台くらいのシンクとワークテーブル、収納用のキャビネット、残り予算で寸胴鍋や中華鍋などの調理道具一式を買い込んで完了だ。
 ところがある時期から、ラーメン店の厨房設備と言えばえらく銭のかかるものになってしまった。麺をゆでるのも餃子を焼くのも専用機、食器洗浄機の設置は当たり前、業務用の冷凍冷蔵庫が鎮座して、ついでにコールドテーブル、いつぞやのエントリーにも書いたがチップアイスディスペンサーがホールに備わる。挙げ句の果てにはチャーシュー(本来的にあれはチャーシューではないがここでは詳述しない。別の機会に書く)を切るためにハムスライサーまで置く店舗が現れた。

 新規オープンの店舗として私が手がけた例を一つ思い出すと、5年前くらいに施工した店でレイアウトプランを詰めた結果の設備機器総計額は納入価にして何と300万円近くにもなってしまった。個人店舗だがこれでもオーナーが使いたい機材のほぼミニマムである。多店舗チェーン展開している場合、本部での設計は更に重い設備になるのでもっと高価だ。

 厨房機材だけでも投資額は約20年の間に何と3倍にも跳ね上がっている。それでラーメンの実売価格が3倍になっているのかといえばそうではないし、業務用の麺の消費量が3倍になったわけでもない。

 現状のラーメン店が軒並みペイできる単価とは、多少の誇張を交えて言えばラーメン一杯が2000円くらいかもしれない。客にとってはとうてい受け入れられる金額ではないに違いないがそれくらい無節操な過剰設備が経営を圧迫していることを自覚できている経営者は一体どれくらい居るのだろうか?(この項続く)
 
 

 


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